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「#幼馴染」のBL小説を読む
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*過ぎたバレンタインに執着する犬獣人×飼い主の男子高校生








『ナマエー!!! チョコレートくれよ!なぁ、くれっ!!』

「……」

『ダッ!? 殴ったなナマエ!!』

「こちとら部活帰りで疲れとんじゃコラ。なにをネジ外れたこと言ってんだバカ犬」

『だってママさんから聞いたぜ! 人間世界では好き合ってるモン同士がチョコレート贈り合う習性があるって!!』

「……母さんに注意しとくのは一先ず置いといて、バカ犬に言うべきことが三つある。
一つ、もうバレンタインは昨日の話になった。 二つ、お前は一応イヌ科だろ。犬はチョコレート食っちゃいけねぇんだよ。 三つ、俺は男だ。どうして俺がお前の為にチョコ買って来てやんなきゃなんねーの。母さんから貰えよ」

『オレはナマエから貰いたいんだ!』


俺の言った最後の言葉のところだけに反応したバカ犬は、
その暑苦しい毛で覆われた腕で、部活帰りで汗臭い俺の身体をギュウギュウと抱きしめてくる。 いや、これはもう既に抱きしめてるとかじゃなくて締めてる。締まってる。

玄関先で言い合っていた俺とバカ犬に気がついた母さんがキッチンから顔を出して「お帰りナマエ ご飯よそっちゃったんだけど先にお風呂入る?」なんて呑気に訊いてきた。獣臭い臭いまで染み付いてしまいそうな勢いで擦り寄ってくるバカの犬の頭を部活バッグで押しやりながら――『ぎゃん!』て聞こえたが無視――悪態を吐く。


「…母さん 何いらんことをバカ犬の野郎に教えてんだよ」

「あら、私なにか間違えたことを伝えた?」

「て言うか何で今日教えたんだ? バレンタインは昨日だろ」

「私の作ったチョコケーキ、好評だった?マサシ君もちゃんと食べてくれた?」

「あーめっちゃ美味そうに食って……つーか人ん家の息子を狙うなって言ってんじゃん…」

「だってあの子とても良い子だもの」

「……はあ、もういいよ」


問答を諦めて風呂に行こうとすれば、まだ懲りていないバカ犬が尚も腰に抱きついて食い下がる。
『ナマエー!チョコー!』
…だからコイツはどうして理解しないんだ。


「犬に、チョコレートは、有害、だって、言ってんだろ!!」

『うううそれじゃあその他チョコに順ずるものなら何でもいい!なんかくれよナマエ!』



おおおおおもう鬱陶しいなコイツ…!
冬場だからってお前のその毛皮を重宝してた俺だけど、ここまで精神的に暑苦しいならコタツに入りながらお前に引っ付くのもちょっと考えるぞ!


「……これでも受け取っとけ!!」

『ブッ!?』


部活カバンの奥で荷物やユニフォームの下敷きになっていたタオルをバカ犬の顔面目掛けてぶん投げる。
汗とか土とか砂埃とかで散々に汚れた洗濯していないきったないタオルだ。
精々その人間の一億倍はあるらしい嗅覚のせいで悶え苦しめ



「ねえナマエ 逆効果だったんじゃないの?」

「は? ――あいつ喜んでる!?」



投げつけられたタオルに顔を埋めながら尻尾を振っているバカ犬の姿がそこにあった


あいつ、そうかと思ってはいたがやっぱり変態だったらしい。
もう金輪際、寝る時に俺の布団に呼ばないようにしよう。
あの毛の温もりは惜しいけど、今日から湯たんぽでも抱きしめて寝ることにする。




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