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『ねえあなた、その歳で"わたし友達少ないから"って可笑しいんじゃない? どうしてそんなに早くから人生諦めてるの? 小学校って嫌が応にも友達100人できるものよ? どんだけ性格ブスだと思われてるわけ? 小学生なのに便所飯ってやばくない? 担任も探しに来ないとかよっぽどねぇ。可哀想だわー』

「花子さん、たまごやき食べる?」

『結構よ。トイレで食べるとか論外だし、て言うかあたし霊体だから人間のもの食べられないし! って言うか話聞いて!』



セーラー服のおさげ女子、と言う"大人しい女の子"の代名詞のような姿をしているのにも関わらず"花子さん"は女子特有のやかましさのせいで大分見た目で損をしているような気がした。


"花子さん"とは、ナマエが転校して最初に出来た友達だ。

小学六年生の冬という中途半端かつ色々な意味で最悪な時期に転校したナマエが、すっかり出来上がっている女子のグループに入ることは叶わず、一人孤立した学校生活を送っていることを見かねて声をかけてきてくれたのが最初だった。
初めて出来た友達が人間でないことはこの際どうでもいいことだった。
花子さんがおばけだろうが、昔この小学校で苛められて自殺した女の子の幽霊だとか、そんなことはどうでも。

生徒たちの卒業や中学受験の対処に追われている担任がナマエのことを省みないように、他のクラスメートたちも、今さら"転校生"と言う者に興味を抱くこともない。心内にあるのは、夢見る華やかな中学校生活についてばかりだ。

花子さんは同情心半分、好奇心半分でナマエに付き合っていた。
どれだけからかっても笑って楽しそうにしているナマエが本当に哀れだと思ったこともある。

今だってそうだ。小学生と言うのは基本的に、社会で必要な"団体行動"や他人とのコミュニケーション能力を養う名目で勉学やその他の常識を学ぶ。
班行動、それが普通だ。授業中然り、給食の時間然り。
それなのに、給食時間でさえ孤立を強いられるとはあんまりだろうに。


『ま、そんな日々とのおさらばももう直ぐよ。中学に行けば絶対に便所飯なんてしなくて済むわよ。 あたし中学校に行かなかったから分かんないけど、きっとそうよ』

「ありがとう花子さん。きっと、花子さんの言うとおりになるよね」

『もちろん!あたしの言うこと信じてなさいって!』

「うん!」



たった三ヶ月、短い付き合いだったけれど、花子さんはナマエのことを この女子トイレを使用する他の女生徒たちよりも遥かに気に入っている。
ナマエが中学に上がると言うことは、即ちお別れであると言うこと。

でもきっと、幽霊である花子さんにも恐がらなかったナマエのことだ。その豪胆で明るい性格は、多くの人間たちに好かれるもので。
ただ今回は、時期が悪かっただけ。


『本来ならあたしみたいな幽霊だけが友達〜なんてありえっこないんだからね! 前の学校にいたときより多く、中学でありったけ友人作んなさいよね!』


洋式個室トイレの空中で浮遊しながら、花子さんはナマエに向かって音が鳴りそうなぐらいの勢いで指さした。


どうして花子さんがそんなに偉そうなんだろう。


「可笑しいの〜」


――変なのは、花子さんの方じゃない。


笑ったナマエに、照れとも怒りとも違う感情のせいで、花子さんの顔にはサッと朱がはしる。

それが彼女の生前にはなかった、
かつて彼女が夢見た、"友達"との"他愛のないやり取り"だったのだ。







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