星を食べた日
この学区から青城と烏野は、正反対の方角でほぼ同じ距離に位置する。青城の練習が終わるのが18時半。烏野の練習が終わるのが18時。だけど飛雄は間違いなく自主練をするから、結果的に19時近く。
今まで会わないのも頷ける。見かけることはあっても気まずさから避けてきたんだろう。要はばったり会うようにしてしまえば良い。烏野の情報が少ないのは仕方ないか。せめて内通者がいればなあ。まあ、計算で確率は出しておくか。
LINEを立ち上げて岩泉さんとのトークを開く。今、伊達工は昼休み。箸を片手に、今日の指示を打ち込んでいく。
{今日、金田一と国見の帰りを遅くしてください}
[わかった。烏野の方には指示いらないのか?]
やってきた返信に首を傾げる。烏野に協力者がいるのだろうか。
{指示できるんですか?}
[まあな。烏野の副主将とこの前たまたま会って、LINE交換した]
{なら好都合です。塩キャラメルを飛雄に装備させて下さい}
[それだけでいいのか?]
{はい}
[わかった]
相手の了解の文字を見て画面を落とす。烏野に内通者ができたことで、思った以上にことが運びそうだ。
ずっとスマホを弄っていたせいか、一緒に昼食を食べている友達が不思議そうな顔をして、こちらを見ていた。
「珍しいね。律ちゃんが食事中にスマホ弄るなんて。」
「ちょっとLINEしてて。」
「へえ、彼氏?」
「いや、彼氏はいないよ。さっきのは中学のときの先輩。」
「なあんだ。」
工業高校で女子は貴重だ。性格も良いし、この子と友達になれてラッキーだと思う。私と彼女のクラスは女子が1人しかいないので、自然と話すようになった仲だが、すぐに意気投合した。
そういえばこの前彼氏がねー、と語りだした彼女の話に耳を傾けながら、弁当に入っていた卵焼きを口に入れた。
prev / next