星を捕まえた日
なんでコイツがここに。と、最初は思ったけど、よく考えたら当たり前だ。俺達は中学の同級生。学区だって同じだ。
俺も俺の隣で固まるらっきょも、目の前のコイツと同じような間抜け面なんだろう。
「金田一、国見……。」
そこには元・王様、影山飛雄が立っていた。掛ける言葉はなかなか見つからない癖に、頭は冷静に状況を把握していく。
今日の部活はいつも通り終わったが、3年生4人から1人1人メッセージを貰った。部活のときの物寂しい雰囲気は暫く無くならないだろう。そんなことがあって帰宅が遅れた今日、絶妙に合わなかったタイミングが偶々合ってしまった。
「……お前、いつもこんな時間なのか?」
「……まあな。自主練、してるし……。」
俺より先に口を開いたのは金田一だった。影山もぎこちないながらもそれに答える。
烏野は山の近くだから、日が暮れるのは青城よりも早い筈。コイツ、いつまで自主練してるんだ。相変わらずのバレー馬鹿かよ。
「げ、元気そうだな。」
「……うん、お前も。」
頭は冷えているのに出てきたのはたった6文字。会話は続かずに途切れる。なんとなく気まずくなって誰も目を合わせようとしない。お前、家そこだろ。早く入れよ。と、この状況から逃げ出したくて心の中で念じてみるが、コイツに効く訳もなく。影山は何やらバッグを漁りだした。
「……塩キャラメル、いるか?」
「「、は?」」
なんだこのマイペース。咄嗟に出た声が金田一と重なった。なんでいきなり塩キャラメル?
「いや、これ、今日すがわ……先輩に貰ってさ。国見確か、塩キャラメル好きだっただろ?」
「あ、うん。好きだけど。」
「合ってたか。金田一もいるか?」
「お、おう。」
雰囲気関係なしに我が道を行くコイツを見て、なんだか今まで馬鹿みたいにうだうだと考えていた自分が間抜けで、小さく噴き出した。そんな俺をぎょっとして2人が見る。
「さんきゅ。」
「おう。」
「らっきょもお礼言ったら?」
「らっきょじゃねーし!……ありがとな。」
「おう。」
なんだ、普通に話せるじゃないか。
「じゃあ、俺らこっちだから。」
「じゃあね。」
「おう。」
金田一が言って、影山は自宅に入っていった。その日貰った塩キャラメルは俺がいつも食べているのと同じものだったけど、少しだけ甘く感じた。
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