星の記念日
岩泉さんに言われて金田一とともにやってきた公園には、なぜか影山がいた。嵌められたな、と思って溜息を吐いた。影山も先輩に呼び出されたみたいだから、同じだろう。いつの間に繋がってたんだあの人等。
何を話そうか、言葉を探して空を見上げると星が綺麗で思わずうわ、と呟いた。
「星、綺麗だな。」
「おう。」
「……中学のことはさ、俺達にも非があったと思うんだ。」
金田一が唐突に言った。それは暫く前から俺達が思っていたことだ。烏野で変わっていった影山を見て、俺達も10番みたいにぶつかっていっていたら、何か変わったんじゃないか。
「お前は悪かった。けど、俺等も悪かった。」
「……おう。」
影山はおう、としか言わない。俺達の言葉に真剣に向き合ってくれている証拠だ。
「だから、全部リセットしよう。」
「今までのことチャラにして、やり直そうぜ。」
「、おう!」
互いに謝ったりしない。友達として、一から全部。ずっと引っかかっていた鉛が取れたみたいに、すっと体が軽くなった。
「あースッキリした!!」
「らっきょうるさい。」
「らっきょじゃねーよ!」
「国見お前、らっきょ気に入ったのか?」
「うん。ナイスネーミングだよね。」
ひとしきり笑ってそろそろ帰ろうってなった。またこうなれたし、岩泉さんにお礼を言っておくか、と思ったとき何かが引っかかった。
「ねえ、影山。」
「あ?なんだ。」
「この前ランニングしてたじゃん。あれって、先輩に言われて?」
「いや、あんときは律が……。」
バラバラだったピースがつながっていく。ああ、なんだそういうことか。俺達はずっと誘導されていたんだ。目の前でなんでそんなこと聞くんだ?、と首を傾げるコイツの、正反対の幼馴染。聡明な彼女の掌の上でまんまと転がされた。この馬鹿2人はどうやらそれをわかっていないようだ。くそ、また一本とられた。
悔しいのに口角は自然と上がる。そんな俺を馬鹿2人がぎょっとして見た。
「ど、どうした国見?」
「お前顔怖いぞ。」
お前に言われたくない。影山にそう言いたくなるのを堪えて、コイツ等でもわかるように説明してやることにする。俺だけが悔しい思いをするのはなんだか癪だ。道連れにしてやる。
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