バイリンガール! | ナノ


 蛍光ペンでチェック

 テスト前の烏野排球部は戦場である。なぜなら、レギュラーとして入っている4人がとんでもない馬鹿だからだ。

 間近にテストが迫ったこの日、部活動は全て停止になり、生徒達は勉強に励む。はずなのだが、それをしないのが4馬鹿である。それを危惧したそれに縁下の案により、烏養コーチの厚意もあって、彼らは坂ノ下商店で勉強会を開いていた。
 3年生は進路に関わるので、1年生と2年生が参加している。嫌そうな顔をした月島も、強制と言われて渋々参加した。


「敵の中に孤立して、味方が一人もいないこと。敵に囲まれ孤立し、助けのないこと……ってどーゆーことわざだったっけ?」

 国語のプリントに手をつけた日向だったが、問1でいきなり躓いた。彼の言葉を拾った谷地が助け船を出そうとするが、その前に声がかかった。

「シメンソカ、じゃない?」

 タシカ漢字はこんなの、と少々カタコトの日本語で言うのはエレナ。イギリス人である。その異様な光景にどう反応をしたら良いのか分からず、谷地は微妙な顔をした。

「イギリス人に国語を教わるとか。日本人としてどうなの?」
 
 反応を示したのはやはり月島で、小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、言い放つ。日向も言い返したいが、事実なので何も言えない。成り行きを見ていた山口や先輩達も苦笑いをするしかない。

「Japanese、勉強してますからネ。But分からないトコロ、ある。
ケイ、What is spinning in Japanese?」

「紡ぐ、だよ。」

 エレナの口から飛び出したのは流暢な英語。それを聞き取り、理解すると月島は溜息を吐いてから言った。それを聞いたエレナはThanks.と一言。律儀にお礼を毎回言うのは日本の影響なのだろうか。

 分からない単語や言葉、漢字が出てくると大抵エレナは月島に聞く。谷地も山口も進学クラスではあるが、1年6人の中で1番頭が良いのは確実に月島だ。彼女はそれを知っており、また自分が英語で喋ってしまっても、ある程度理解してくれるから、という理由で月島を選んでいる。
 分からなかったものに蛍光ペンで線を引くと、漢字、読み仮名、意味、英語、を纏めた専用ノートに書き込み、記録していく。中学から使っていたものなので、もう少しで白紙のページは無くなるだろう。


「ケイ、コグってなんだっけ?」

「row.」

「That's it.」



「硬いと固いと堅い、何がチガウ?」

「硬い石。団結が固い。堅い材木。」

「……?」

 ぽんぽんと単語を出していく月島に感心し、負けてられない、と縁下はペン持つ手に力を入れた。だが、まずこの煩い2人を何とかしなければ、遠い目をして深い溜息を吐いた。

















「ケイ!コクゴ、upした!」

「君がいつも聞いてくるから、お陰で英語上がったよ。」

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