短編&分岐 | ナノ


  文句ある?


 漫画みたいだね、と中学の時に言われたことがある。というか我ながらそう思う。

 異性の幼馴染で家が隣、部屋も隣合わせで、窓伝いに互いの部屋を行き来できてしまう。いつもヘラヘラした某先輩も、それなんて少女漫画?と真顔で言ったものだ。

 部活の忙しい飛雄はよく家事を疎かにする。お互い親は滅多に帰って来ない為、自分のことは自分でやらなくてはならない。弟も居て面倒にもある程度慣れていた私は平気だったが、飛雄はそうはいかなかった。

 一度飛雄はそれで酷い有様にしたことがある。そんな彼を見かねた私の母とおばさん、つまりは飛雄の母が影山家の鍵を私に持たせた。まあ飛雄も苗字家の鍵を持っている訳だけれども。

 鍵を持っているといっても、使うことはほとんどない。大体窓が通路になるし、私が影山家で用がある場所といえば、飛雄の部屋とリビングくらいだ。リビングは部屋と同じ2階にあるし、1階には正直言って用はない。

 私の家はものづくりを職業とした父が、使っていた機械がいくつもある。余談だが、結構本格的なものが作れるために私が興味を持ち、進路を伊達工に決めたのだ。閑話休題。

 一般家庭よりも大きな家の、1番玄関から遠い部屋が私の部屋だ。作業部屋を作ったが故に、複雑な造りになっている場所もあり、初めて来た客が混乱することもある。

 まあぶっちゃけ、面倒くさい訳であって。だから私たちは窓を通路とするようになったのだ。

 危ないから、とはもうとっくに言われなくなっているし、手っ取り早いし、いいかなって。溶接の仕方の指導をしてくれている茂庭さんに言ったら、複雑な顔していた。




文句ある?

 だって面倒くさいんだもの。

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