山本武
「大変だー!」
すれ違ったクラスメイトたちは皆焦った顔をしており、ミラも異常なほどの彼らの様子に動揺した。
「山本が」
「自殺しようと」
「骨折したらしい」
「早く屋上に」
クラスメイトたちが呟く言葉を継ぎ合わせていくと、山本が屋上から飛び降りようとしているらしい。
屋上着いたミラだったが、両手をぎゅっと握りしめるだけで動かなかった。山本とはあまり関わったことが無い。だが目の前で命を捨てようとする人を何の感情も無く見捨てることはできないのだ。自分じゃ何もすることはできない。だから山本を説得する友達を祈るように応援した。
けれど、ミラが傍観に徹していられたのはここまでだった。
山本がツナをひき止めようとすると、フェンスが壊れ、二人は背中から落ちていく。
周りの悲鳴、叫びはミラには聞こえておらず、彼女の体はいつの間にか宙に飛び出していった。ミラは二人を掴むと自分の体が下になるように体を捻る。
これで彼らは助かるはず、と目を閉じた。
ズガンッという音が聞こえたかと思うと、跳ね返るような浮遊感を感じた。
ミラと山本は何が起きたのか理解できずポカンとしており、パンツ一丁のツナを見てさらに首をかしげる。
この日からミラは山本と関わるようになったのだ。
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