色摩の過去の誓い
あの後、変人コンビ、ゲリラコンビを筆頭に詰め寄られたが、さりげなくかわして逃げてきた。




『中学最強』

私はこの呼び方が好きではない。
正しくはこれと一緒に呼ばれる『天才』が、だ。

同輩や後輩は良かった。けど、先輩は私を良く思っていなかった。
と言っても全員ではなく、レギュラーの先輩達はとても優しかった。

バスケは中学に入ってから、修造につられて始めたものだった。
今は純粋にバスケが好きだと断言できるが、あの頃の私は "バスケが好き" というより "修造に置いていかれたくない"という気持ちの方が強かった気がする。

帝光女子バスケ部も実力制だったから、1年の夏には準レギュラーになった。
その頃、周りから『天才』 と呼ばれるようになった。

努力はしてたけど、バスケで修造に勝てた試しはなかった。この時ほど、男女の差を恨んだことは無いだろう。

自分に自信を無くし、一部の先輩達から嫌がらせも増えてきた頃、私はバスケを機械的にこなしていた。

全中の日が迫り、レギュラーが発表された。スタメンでは無かったが、私はメンバーに選ばれた。

先輩達の目が怖い、いっそ選ばないで欲しかった。

精神的にも限界が来て、修造に全てを話した。何を言ったか、何を言われたかなんて覚えていないけれど、修造が「やりたいようにやればいい、あと俺を頼れ。」と言ったことは良く覚えている。


全中、2年の先輩と交代で入った私に迷いは無かった。
3回線の第3Q、才能が開花した日。
体が妙に軽かったのを覚えている。暑さも寒さも感じなかった。
後から知ったことだったが、その時の私はゾーンに入っていたらしい。



全中で優勝を果たしたとき、先輩達に抱きしめられ、誉められた。

「紗瑛ちゃん!凄いよ!!」
「紗瑛のおかげだよ!」
「頑張ったじゃん!」

呆けてる私に当時の主将が言った。
「紗瑛は遅くまで残って誰よりも努力していたからね。
必ず勝利に導いてくれるって信じてた。
だから、監督に言ってメンバーに入れてもらったんだ。」

期待していたとおり、と主将は笑った。

思えば、レギュラーの先輩達は私を『天才』と呼ばなかった。
それは、私の努力を知っていたからかもしれない。

認めてくれていたことが嬉しくて声が出なかった。
けど、言わないと

「来年も、再来年も、必ず優勝します。」


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