We just...



そう
一年の時から食えないやつだと分かっていた。


手にいれたいと思って手を伸ばしてもそれをように身を翻され。


だから俺は口に出さなくても好きだからいいと、止まることはせずに、お前を手に入れようと精一杯に手を伸ばした。


We just...



手を伸ばしても届かないもの。
それは人間なら誰にでもあるもの。


手塚国光の場合それ、つまるところ手を伸ばしても伸ばしても届かないものが、不二周助であったという、たったそれだけの話。


部室で二人きりの今も強行突破すれば、彼の一部は手にはいるかもしれない。
しかし手塚が欲しいのはそれじゃない。
不二周助のもっと深くに眠っているもの。
それを手に入れたいと手を伸ばしても
伸ばしても
伸ばしても
掴めなかったそれを
跡部景吾はいとも容易く持って言った。


悔しいといえば悔しいし、悔しくないといえば悔しくない。
全く奇妙だが
手塚が折れないのは、何か不二に関して確信に近い自信を持っているからなのか、単に悲しくないだけなのか、本人にも定かではない。

憎いといえば憎い、憎くないといえば憎くない。
やはり奇妙だ。


「ねぇ…手塚…」

「何だ。」

不二は仏頂面で隣に座っている手塚を覗き込む。

「…はなしって、何。」

「急ぎか」

「いーえぇ」


束の間の沈黙。


「不二」

「何」

「……好きだ。」

「!?」

不二は目を真ん丸にして手塚を振り返った。
このシチュエーションで手塚を振り返る辺り、バカとしか形容できないが、不二はいとも容易く手塚に唇を奪われた。

ビクッと体を仰け反らせた不二に、手塚は気をよくしながらチュッと態とらしく音をたてて離れた。


「…諦める気は毛頭ないからな」

はっきりとした物言いの手塚に不二は溜め息をついた。


「跡部景吾に何言われても知らないからね」


「…お前はバカだな」


それは俺に一番言ってはいけないだろう、と続けようとしたのを諦めて手塚はテニスバックを背負った。


「楽しみにしていろ」


言い残してドアを閉めた手塚を見送るわけでもなく見つめていた不二は
だからお前は無神経すぎだから、ちょっかい出されんだよ!
説教してくる跡部の顔を思い浮かべて、心底嫌そうに顔をしかめた。





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