くるり。クルリ。
何も嫌われている訳じゃない。そこだけは自信があった。
後輩として可愛がられてる。
そこもかなり自信があった。
[くるり。クルリ。]越前リョーマはかなり上機嫌で階段をかけ上がっていた。
回りの目に普段クールだと称される自分の姿がいかに映っていようと彼には関係ない。
とにかく急いで3年6組のドアへと向かった。
開きっぱなしの教室から顔を覗かせれば
目的の獲物は直ぐに見つかり
越前は人知れずニヤリと笑う。
「不ー二せーんぱい」
気が付いたらしい亜麻色の髪がさらりと風に揺れた。
それを見た越前はああ、相変わらず綺麗だなとかどうでもいいことを思案していた。
「何、越前くん」
不二は不思議そうに歩み寄ってきた。
この人は本当になにも解っていないような隙の多いことをよくわかった上で
越前はいつもの挑戦的な目をして言ってみせる。
「ねぇ、弁当、一緒に屋上で食べましょうよ」
「?」
不二はキョトン、というよりは理解不能という表現がぴったりな表情を見せた。
「…なんで僕と?」
「なんとなく」
「………いいよ」
案外簡単だった不二の答えにまた越前は人知れずニヤリと笑う。
やっぱり隙だらけ。
そんな経緯で不二は二つ下の後輩と屋上で弁当を広げている。
不二は中庭にしようと言ったのだが越前が屋上がいいと言ったのでこっちにした。
あぁ、後輩と一緒に食べてあげるのに加えて場所まで選ばせてあげるなんて、僕はなんて優しい奴なんだ、となんとも言えない思案に耽っていた不二は、越前が自分を観ていることに気がつくのに多大な時間を要した。
ふと視線に気がついて目だけを巡らせれば、呆れ顔の越前が目に映った。
「アンタってさ…」
ちょっと先輩に向かってアンタはないでしょと反論しようとしたのも、越前の唇に口を塞がれてそれはまたお腹に戻ってしまった。
越前は態とらしくちゅっと音を立ててから唇を離した。
不二は拒絶するでも抵抗するでもなく越前をジーっとボーッと眺めていた。
「…アンタって隙が多すぎる。」
「君って僕のことを先輩と思ってないよね」
不二はニヤリと笑った越前をため息混じりに軽く睨みつつ言った。
「思ってないよ。
俺にとって不二周助は獲物であり好きな子だから。」
またニヤリと笑って凄いことを叩きつけてきた越前を不二は再び軽く睨みつつため息をはいた。
越前がそんな不二を見て
つーかまーえたっ!
とほくそ笑んでいたのを
やっぱり不二は知らないのだろう。
くるり。と世界が逆さに回り出す。
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