君と僕

部活も終わり皆が着替え始めた部室でのこと。


あぁ
余計なことを言ったから悪いのか


そんなことをさっきから呟いている、立海が誇るワカメ、もとい切原赤也を見て、丸井ブン太はそれに話しかけた。


「…お前、さっきから何ブツブツ言ってるわけ?」


膨らませた風船ガムが見事に弾けてしまい、いささか不快な心地のした丸井は、無意識のウチに声が尖ったのが自らも分かったが、敢えてそのままにしておく。

案の定、切原は気にした風もなく丸井に答えた。


「……喧嘩したんすよ」


その先を言わない切原をチラリと見た丸井は、おそらく彼が待っているであろう問いをし仕方なしに言ってやった。


「誰と?」

予想に反せず眉を垂らした切原は

「不二さんっすよ!」

と丸井の肩を掴む。
当たり前のことではあるが、丸井は面食らって部室内を見回す。
しかし一向に視線が合わないのを、段別気にした風もなく、丸井は切原の肩に手を置いて、先輩らしく説いてやるのだ。

「そんなときは、お任せだぜぃ!お悩みをすべて解決!……ジャッカルが!」

「俺かよっっ!!」

いつもの台詞を返したジャッカルは、言ってから酷く後悔した。
目があった丸井がニタァと嫌な笑いを浮かべながら、切原から離れる。
ジャッカルは一つため息をついた。


「……んで、何が原因だ?」


切原ははぁと溜め息を吐いて、小さく口を動かし始めた。

「…俺が……余計なこと言ったから…」

「余計なこと?」

「…チビとか痩せとか我が儘とか性格ブスとか貧乳とか…」

その最後のはおかしいだろ、と内心ツッコんだジャッカルの思いを、誰かが綺麗に代弁してくれた。

「…最後のはおかしいだろ」

その凜とした声に、まさかと思いつつ振り返れば、案の定魔王が仁王立ちになって部室のドアを開けて立っていた。

「ふ、不二さん」

「やぁ、切原。久しぶりだねぇ」

その輝く笑顔に恐怖を覚えないものは一人も居まい。


「…ど、どうも…」

「100年ぶりくらいかな?」

「…はい?」

「ときに、切原。僕、今日はわざわざ電車に乗って、わざわざ神奈川まで来て、わざわざ立海まで歩いてきたんだよね」

だんだんと不二の笑顔が無表情に近づいていく。
切原は徐々に地べたに近づいていく。

「…そ、それは……」

「うん。君のためじゃないよ。そんなこと僕がするわけないだろ。君と付き合ってるわけでもないんだし。まあ、それはどうでもいいだろ?」

「…いや、問題ありっす。」

「な、に、か、言っ、た、?」

「…ぃぇ」


一部始終を見ていた立海メンバーは全力で目を反らしている。
そのなかで一人、幸村だけがそれを面白そうに見ている。


徐に立ち上がった幸村は、そっと不二の肩を抱いた。


「喧嘩してるんなら、俺と遊ばない?」

切原は慌てて間に入ろうとしたが、不二の言葉がそれを制した。

「アハッ、喜んで」

切原は驚いて、不二を穴が開くほど見つめるという不毛な行動に出た。

「不二さん!」

「君には関係ないだろ?」

「あります!」

「切原の切は痛切の切です」

「違ぇ!」


またつまらない言い合いを始めた彼らにため息をついた幸村は、不二をそのまま連れて歩き出した!


「ちょ!」

追いかけようとした切原を、またもや不二が制す。

「君とは付き合ってるわけでもないんだし、いいだろ?」


それを聞いて固まりかけている切原に丸井がヒットな質問をぶつけた。

「え?何、お前ら付き合ってなかったのかよぃ?」

(…キラークエスチョンじゃな)
その丸井に仁王が失笑をしてみせる。


撃沈している切原を見た丸井は、自らが彼を闇に突き落としたことに気がついていないらしく、ジャッカルと仁王を振り返った。


「…あいつら、続いてんの?」

「…かれこれ4ヶ月」

「ここまで続いちょる理由を、ぜひ説明してもらいとうもんじゃのう」

「はげどぃ」


丸井が一ヶ月後には別れているだろぃ、と思ったのはまた別の話。


+--+--+--+--+--+--+--+
切不二は切原が不二を溺愛してるといいな。
そんでそれを冷たく受け止める不二とかいいな。
でも互いにちゃんと信頼しあってて大切にしてるといいな。


切原の頼みは文句を言いつつも聞いちゃう不二とかいいな。


初っぱなからこんなですいません_(._.)_

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