──という流れだったのだが、何故か自分は万事屋へ向かっているようだ。
屯所にいる山崎とかいう地味なヤツに任せて帰ってくれば良かったと後悔したが、土方はそれを望んでいない気がした。
認めたくないが、自分とコイツは少し思考回路が似ているらしい。
どうしてこんなことになっちまったかねェ、とまた一人ごちて仕方なくいつの間にか着いてしまっていた万事屋へ入る。
とりあえず血の付い隊服を脱がせ、自分の布団に寝かせる。
出血はあまりひどくないようだ。
いつ買ったかわからないような薬と包帯で応急措置をし、額に浮いていた脂汗を拭いてやると、土方は少し落ち着いた。
そして少し悩んでから申し訳ない、と思いつつも土方の携帯から知ってるヤツの名前を探した。
何十件、何百件というアドレス帳から山崎、という名前を見つけ、電話をかけた。
2コール目で「はい、山崎です」と寝ぼけた声が聞こえた。
『副長、どうなさいました、こちらの携帯からは珍しいですね』
「あー…えっと俺、土方じゃないんだわ」
『え?あ、もしかしてその声、旦那ですか?』
やべえ、余計なこと言っちゃったよ、と呟きが聞こえた。
銀時は少し胸にモヤモヤしたものを感じた。
『で、どうなさいましたか、副長が何かされましたか?』
「あ、あぁ実はな…」
「オイ」
後ろから声がかかった。誰かなんて確かめるまでもなく、土方だ。
いつの間に起きたのだろう。
「携帯……替われ」
「あージミーくん、副長さんに替わるわ」
『え、あ、はぁ』
土方に携帯を渡してやると、土方はスッと顔を仕事用に変え、口調もますます毅然としたものになる。
「──あぁ、……の路地裏だ。俺も今行く」
電話を切る音がし、銀時は襖を開けた。土方は血塗れの隊服を着ているところだった。スッと横目で銀時を見た。
「邪魔したな」
「その怪我で行くのか?」
「大したことない」
スカーフまできっちりと巻いた土方は部屋を出ていこうとしたが、頑として銀時が動かない。
「──おい、万事屋、邪魔だ」
「………」
「おい、万事屋──……っ!?」
土方の肩を掴み、押すと彼は呆気なく布団の上に倒れ込む。
「てっ…何すんだ…っ」
「死ぬよ、お前」
「な…」
土方は呆気にとられながらも銀時を睨んだ。
強い視線を受けながら銀時はもう一度言う。
「死ぬよ、お前」
「死ぬかよ、こんなことで」
ばかにしたように笑う土方の肩をさらに強く押し、土方は眉をひそめた。
──何をしているんだろう、自分は。銀時はふと我に返った。
さっきまで土方に偉そうに言ってたくせに、仕事だと言ったのは自分であるのに。
そもそも、さっき感じたイラつきは何だったのだろう。
「……てめえは俺にどうしてほしいんだ」
そんなの俺が聞きてェよ。
いやに真っ直ぐな土方の目から視線を逸らすと、土方は銀時の腕を掴み───
強く握った。
「いってェェェェ!!」
「邪魔なんだよテメーは!!」
さっきまでの緊張した空気が散漫し、土方は何事も無かったかのように立ち上がり、歩き出した。
「テメーも…気を付けることだな」
「あ?」
「そっちは仕事じゃねえんだ、全て護ろうなんざ思わねェこった」
感情の読み取れない声で土方は言った。
「けっ、鬼の副長さんは優しいことで」
「俺が鬼ならテメーは夜叉だな」
その言葉に銀時はハッとした。
まさか、知っているのだろうか、
銀時が昔、『白夜叉』と呼ばれる攘夷志士だったことを。
内心焦る銀時に一瞥もせずに土方は万事屋を出ていった。
残された銀時は一人ため息をついた。
夜はまだ、明けそうにない。
-了-
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初小説でした。
恥ずかしっ笑
絶対に二人はこんな人じゃない。
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