思いつき。 ※ノンケ×ゲイ設定 離せ、と静かに言った声が震えて沈黙を破った。それでも腕を掴む手は離れる気配がなかった、むしろ力が強くなったくらいだ。 「待て、ちゃんと話聞けって」 「何を聞くってんだ、久しぶりに抱いた女の感触か?」 笑ってやろうと思った皮肉が、あまりにも冷たくて自分でも笑えない。ますます相手の罰の悪いような顔が深まる。 「…悪かった、だからひじ…」 「別に、怒ってるわけじゃねェ」 「じゃあ、なんで」 目も合わせないんだ、と言いたげだったが、本当に土方は怒っては、いなかったのだ。だが。 「もう、終ェだ」 万事屋は目を見開いてまた力強く腕を引いた。待て、とか細く聞こえてその滑稽さに笑いそうになる。 「待て、一回だけだろう、そんな」 「そういうことじゃねェ」 一回など回数の問題ではないのだ。これでようやく自分の目が醒めたと思った。 「…てめーはノンケだろうが。いつまでも俺なんかと付き合ってけるわけがねェ」 「…………」 万事屋を縛っていたのは自分であったと気づいたのは、いつ頃だったか。街中で知らない女が万事屋に告白をしているときか。詳しく言えばあいつが少し淋しそうに断ったのを見て、か。 「もう、てめーが無理だろうよ」 真意を知ってか、万事屋は黙り込み、手を緩めた。その隙に腕を振り払った。これ以上触っていると自分が辛くなる。 「……悪かった」 俺なんかに付き合わせて。 そう言うと痛ましそうに表情を歪ませた万事屋が絞り出すように、好きだった、と溢した。 好きだった。 その言葉を聞いて、土方はもう過去なのだ、と自嘲した。 もう一度万事屋は繰り返す。本当に、好きだったんだ、と。 「俺は、きっと一生好きだろうぜ」 去り際に言うと、後ろから戸惑ったような声が聞こえた。土方は目を閉じてゆっくりと歩き出した。 あいつはまた新しい女を見つける。 ──…それでも俺は。 立ち止まったままなのだろう。 煙草をふかしてポーカーフェイスを気取ることには慣れている。 また一つ大事なものをなくしていく俺は、最後には何が残るんだろうな。 *************** 何をどうあがいても、やっぱり自分には真選組しかないだろうよ とか思ってる土方に恐ろしく萌える。 |