久しぶりに夢を見た。
土方はゆっくりと目を開けると、少しの息苦しさを感じた。その息苦しさの正体を探ると、銀色が視界を占めた。
そこでようやく思い出した。
──あぁそうか、俺はこいつと…
そこまで思い出し、ぐっすりと寝ているヤツを見た。
「万事屋」
小さく呼んでみても銀時は起きる気配が全くない。それで良かった。
こっそりと銀時の腕の中から抜け出し、着流しを着る。
外はまだ薄暗かった。
夜明けはまだだろうか、と思いつつも朝が来なければいい、と土方は願った。
土方はこの時間が好きだった。気を緩め、何も考えずにいられる時間が。
土方は額を格子にくっつけ、目を静かに閉じた。
ここからいつもアイツは何を見てるんだろう。
そうしていると、後ろから抱きすくめられた。
「何やってんの」
耳元に直接話してくるのがくすぐったくて身を捩ったが万事屋はなかなか離さなかった。
「外まだ暗いよ」
「……ここから」
「ん?」
「てめえがいつも見てるもんは、なんだ」
眼鏡やチャイナ達か、町全体か。
それとも自分の過去か。
「何も見えねえよ」
万事屋の淋しそうな声が気になり、後ろを振り返りたかった。
「こっからじゃあ、何も見えやしねえよ」
だから会いに行くんじゃねえか、お前に。
「………え」
驚いて振り返ると、ヤツも驚いたような顔をした。
「え、何、お前を見てるとか言って欲しかったんじゃねえの?」
「バカじゃねえの」
土方は薄く笑うと、万事屋は困ったように頭を掻いた。
「なんでそんなこと聞いたの」
「…夢を見た」
万事屋はどんな、とは聞かなかった。相変わらず変なところで気の回るヤツだ。
「お前が、死ぬ、夢」
声が思いの外震えてしまった。
夢の中のこいつは町のために、町にいる人たちのために死んでいった。
「銀さんはそんなことじゃ死にませーん」
「どうだかな」
確信していた、こいつはそう言いながらガキどもが危ないときには身を持って庇うのだ。
「……間違っても俺なんかを庇って死んでくれるなよ」
言ってからしまった、と後悔した。
変な夢を見て感傷的になったのだろうか。
「約束出来ねェな」
そう言った後、頬をひとなでされた。暖かい手だった。
「それに、俺はお前の前で死なねェよ」
思わず、笑ってしまいそうだった。
信用のできない戯言だ。
「まだ夜は明けねェよ、寝ようぜ」
腕を引っ張られて思わずつんのめる。
──だがその戯言もたまには信じてやろうか。
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土方デレターンのお話です笑
絶対に銀さんの重荷にはなりたくないと思っている土方さん。