流れ星には願わない | ナノ



何をするのも時間の無駄に思えた。

物心のついたこの年頃だからそう思うのだろう、なんて年寄り染みたことを感じる。だからって何かに夢中になろうとは思えない。高校に入学すること自体かったるいとは思ったが、それは将来のためだ。我慢しよう。今はまだ癒えない傷も、いつかは必ず癒えるはずなのだ。誰もが乗り越えるはずの苦しみと悲しみと脱力感なのだ。入学式が終わり席に座る。隣の席になった男の子と目が合った。彼は切れ長の瞳がわたしを捉える。黒い髪がつやつやとしている子だ。彼の瞳に写っているのであろうわたしは、うまく笑えていると思う。わたしはにこっと口角を上げて、彼と一言挨拶を交わす。

「よろしくね」
「ん、ああ」

人付き合いは悪い方ではない。中学では上辺だけの簡単なともだちは困らない程度にいたし、親友と呼べるくらい深い仲の子も一人はいた。そもそも学校は嫌いだったが部活は好きだった。というか、バスケが好きだった。それも、途中でやめてしまったのだけど。だからわたしの胸は今でも痛むのだけど。隣に座っていた黒髪の男の子の視線を感じたが、気付かぬふりをして机の上のプリント類を眺めた。がらり、先生が教室に入ってくる。中学の教師とそれほど変わらない雰囲気を漂わせた中年の男性が自己紹介をはじめる。

「入った経緯は各々あるにせよ、縁があってこの高校で、このクラスで、」

校長だか教頭だかの二番煎じのようなスピーチをよそに、小さくため息をついた。ふう。唯一自信の持てる長くて細い指先で辿った烏野高校の文字。人気の高い制服を身に纏って、どうでもいいとしか思えない話をきらきらとした瞳で真面目に聞くクラスメイトを半ば馬鹿にした。こんな話に聞く価値があるのかと。携帯のパスコードを解除した。新着メッセージが2件。内容は見るまでもなく削除した。もう中学時代の子とは関わりたくないし、関わることでメリットを見出せない。慣れたその動作を黒髪の彼はずっと見ていた。

「どしたの」

愛想笑いを浮かべてちらりとそちらを見る。小さな声量で声をかけると彼はいや、と言って前を向き直った。教師は自分の言葉に酔っているようでスピーチを辞めようとはしない。もはやわたしたちなど目に入っていないのではないだろうか。生徒も初々しく話に必死に耳を傾ける。馬鹿馬鹿しい。うざったい。ああ、つまんない。つまんないの。

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