赤い糸なんかじゃなくて


ぼろぼろのロッカーを前に一旦停止。何やってんだ、とわざと呆れた声で返したら、嫌な予感がする、と低い声が返ってきた。やめろお前の嫌な予感、けっこー当たるから嫌いなんだよ。

「古市開けて」
「…向こうむけー」

そしてそれに巻き込まれるのはやっぱりいつだってオレ。いいですか、二次災害という言葉が今イチバン似合うのはオレですよ。アバレオーガのせいでな。
あけるぞ、と言ってへこんだロッカーに手をかける。どうせ画ビョウとか画ビョウとか入ってんだよ、日頃の行いのせいだ。

「うっそ、」

予想外の光景にぐらっと意識が傾いた。気がした。
画ビョウ、は紙だった。じゃなくて入っていたのは手紙だった。なんだこれもしかして、ラブレターとかいうやつですか。いやいや待ていまさら手紙?現代はメールだろ、

「おーい古市もういい?画ビョウぐらいなら笑って受け止め」
「待て状況把握させろ」
「はあ、」

男鹿の声にとりあえず意識を寄せる。そうだコイツは女子のアドレスなんか知らない。ぜってー知らない。だから手紙なのか?いやまてもしかしたら呪いの手紙とかかもしれない。うんそうだ。
頭の中とは反対に、案外落ち着いた右手を伸ばして封筒を握る。
男鹿もういいぞ、と口にして、目の前にラブレター(仮)を突き付けてやった。やっぱり男鹿は は?みたいな顔をしたけどまあ、そりゃあそうだ。

「…なにこれ」
「ラブレター?」
「他には?」
「呪いの手紙かも」
「そうか殴るぞ」

男鹿が手紙を読みはじめて核心した。あーあ、やっぱりラブレターか。
なんで男鹿なんだよ、男なんてもっといるじゃねーかよ。喧嘩ばっかで悪魔みたいなやつのどこがいいんだよ全く。女子ってわかんねーなあ、なんかもやもやする。ほんと意味わかんねー のは オレだ。なんでこんなに気分落ちてんの。寂しいなんて言ってる心臓に気づいてしまうくらいには、心境は最悪だ。意味わかんねぇ。
さっきから足元しか映してない視界が揺れはじめた時、男鹿の声が聞こえて右手を握りしめていることに気づいた。だめだこれ以上考えたら変なことまで気づきそうだ。そういえばオレの勘もなかなか当たる。

「放課後美術室だって」
「あっそ、場所わかんの」
「わっかんね」
「教えるから行けよ」
「…行かねー」
「は?」
「行ってほしいの?」

顔を上げると、ニヤリと笑う男鹿と目が合った。オレはこの顔を知ってる。見透かしたような笑い方になぜか安心してしまう。くそ、最悪、なんかむかつく。

「寂しくねえの?」
「はあ?だれが、!」
「オレが古市なら」
「、……」
「寂しくないけど」
「うっ、ぜえ」

からからと笑いながら首に腕を回されて引き寄せられる。オレ、じゃない。お前だってドキドキしてんじゃん。オレは寂しいよ、なんて多分、伝わるから言わねえよ。