が走っていく



腐れ縁のふたり

ぼわりぼわりと白い息が男鹿の口から生産されていく。寒い寒いと呟くのに防寒をしようとしないのだからこっちが困る。ぐるぐるに巻かれたマフラーと手袋はオレを守ってくれているからそれなりに暖かい。いや寒いけど。
左手の手袋を取って、いるか?と渡したらいらねぇと断られた。なんだよせっかくのオレの優しさを。

「こっちのが暖かい」

ぐいっ。左手を繋がれてそのままポケットにつっこまれる。今度は右手が寒く感じた。なるほどたしかに暖かい。
だって手袋に勝る



硬田中学

古市くんは珍しく休みだった。ふたりで帰る機会なんか、めったになくて少し緊張してしまう。歩きながら、なんだか明るいなあ と思った。前に比べたら。時計は5時を示している。日が暮れるのが遅くなったのは、冬もなかなか過ぎたからか。まだ全然寒いけど。僕の息は白く消えていくし、男鹿くんの鼻はやっぱり赤い。

「今日はやけに明るいな」
「あ、僕も今思ってた」
「あっそ」
「うん。偶然だね」
「…暇だから家まで送ってやるよ」
「えっ」
「なに」
「いやっなんでもない…!」
心臓がもちません



石矢魔最強

すっかり雪が溶けた公園で待ち合わせをするのが、最近の日課みたいになっている。渡されたココアが身体に染み渡る。

「今日もバイトだったのか」
「まあな。学校ねえからどうも暇だ」
「自由登校なんてうちの学校にはいらねーだろ」
「万年サボりみたいな奴ばっかりだからなぁ」

毎日のように会ってはいるが、学校で会えないというのはなんだか、ぽっかり穴が空いたような感じがする。地面に落とした目線を上げようとしたとき、東条の優し過ぎる声が響いた。

「卒業したら一緒に住もうか」

は?ちょっと待てそんなこと簡単に言っていいのか。笑うなよ馬鹿じゃねえの。ガラにもなく泣きそうになんだろーが。
春が来ますね