君だけを愛してる、なんてクッサイセリフはどこから生まれたんだろうか。暇つぶしにつけたテレビから流れるセリフを聞いてぼんやりと思う。人間なんて多くを望むものだろ、ヒトリだけなんてありえるのか。だってそれこそ家族も愛してるの対象なんじゃねーの、いやよくわかんないけど。ヘリクツだけがぐるぐる廻って消える。静かに音もなく消えていく。つーか、右肩重いんだけど。お前人ん家にいきなり押しかけてきたあげく人を支えにして寝るなよ。だいたい用がないなら何で来たんだ。だけど今動いたら男鹿どころかその膝の上で寝ているベル坊だって癇癪を起こす。それだけは解る。黒焦げになるのはごめんだ。「起きろよデーモン」別に起こす気にはならないけど、物寂しさを埋めるために呟いてみた。デーモンなんてそれこそ聞かれたなら大惨事だ。起きない保証は十分にある。イビキでもかいてくれたら迷わず突き飛ばすのに、静かだ。男鹿じゃなかったら迷わず突き飛ばすのに、やっぱり隣にはこいつしかいない。気持ちよさそうに寝てますね。こっちの身にもなってみろ。やることない。から頭から抜け切らないクサイセリフを何気なく再生すれば、空気に溶けるようにまた消えていった。「君だけを愛してる」。アーアー、なんだかなあ。心臓は少し速い。違和感はあんまりない。別にいいかもしれない。いっそのこと伝わればいいのに。なんて矛盾だ。お前だけだよ、なんてなあ。案外アリかもしれない。なんつって。とりあえず「…大丈夫かオレ」


ぐるぐる