昨日の世界と新世界

からから、音をたてて


「いつから、記憶が戻っていたのかしら?」
「俺が貴方に答える義務などないです。牢屋に入れられる囚人なのだから、もういくら罪を重ねてもいい。」
「あらあら。うふふふ。まぁ、いいでしょう。それよりも着いてきて欲しい所があるの。ジュダルが見てほしいって駄々をこねたのよ。」
「俺が行く意味がありますか?」

睨む様に魔女を見るがそれは軽く受け流された。魔女の目はもう俺を見ておらず視線の先にはジュダルと白龍がいた。
魔女は2人に近づき笑う。

「白龍。あなたとはなしてみたくにって来たのよ。ジュダルがあまりにあなたをほめるものだから……。」
「………!?」
「さあ、顔をよく見せて。大きくなって…、母上に触れさせてちょうだい。」

魔女は白龍に手を伸ばすが跳ね返される。あぁ、歪だ。母親を憎むしか出来ない子供などこの世に存在してはいけないのに。全てはこの魔女のせい。はやく、消さなければ。

「フフ…いい目をするようになったのね…。やっと白雄と白連と同じくらいには…。」
「………何?」
「あの時は…あなたと白瑛など、どちらでも良いと思っていたけれど…。白瑛も、同じように…殺してしまおうかしら。」

白龍が怒り、魔女に攻撃する。だが、まだ白龍は幼い。この魔女は何千年もの時を生きてきた。勝てるはずもない。
俺は魔装をして、大量の炎を作り出した。そして、飛ばされた白龍の背後に回りそれで受け止める。白龍は驚いた様だがその炎が自分を痛めつけるものではないと分かり力を抜いた。

「これ、は?」
「人を守る、心の炎。愛は燃えるような恋って言うだろう?それは守りたい、頼りたい、笑わせたいと思う心の熱情。俺はそれを体現させてるだけだよ。」
「心の炎……。」
「紅陽さん。いつ、私がそこを動いていいと言いました?」

魔女が真顔で俺に近寄る。俺は白龍を背後に回し視界から外した。

「あなたに指図される謂れはない。俺はあなたを皇帝だとは認めていない。」
「だけれども貴方が言ったのよ?白龍が選んだ人が次の皇帝になると。」
「ええ。そうですね。けれど、俺は白龍に従うんです。貴方に従うわけじゃない。」
「嫌ねぇ。そういう言葉遊び。だけどもう、良いわ。白龍、あなたは私の可愛い白龍でいればいいのよ?ふふ。」

魔女はくるりと姿を翻し歩いて行く。そして、少しした所でこちらを振り返り醜く笑った。

「紅陽さん。まだ生かしてあげるわ。」
「そういった事後悔させてやりますよ。」
「あら、怖い。」


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テーマ「人外ファンタジー」
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