予定調和も蹴破る君

からから、音をたてて


次の日、皇帝陛下の前に炎兄様などの子供たちが集まった。皇帝陛下の体は腐敗を防ぐ為に術を使ったのだろうか、ぶくぶくとイボが全身に広がっていた。穢らわしいそれはもはや人間とは言えない。
だが、それに気を取られていてはいけない。

「次代皇帝陛下は練玉艶である!」

ああやはり。あの魔女は皇帝陛下さえも手中に入れていたか。

「そのお話、少し待って頂けますか?」
「……紅陽さん。何か?紅炎の従者である貴方にここでの発言権はないのよ。」
「紅炎様の従者、ねぇ?ふふ。じゃあ、俺が皇帝陛下の息子だと言ったら?」
「…え?」
「今ここで宣言する。俺は皇帝陛下の第三皇子である!俺は一時行方不明になっていた。その間に書かれた遺言には俺のことが書かれていない。ならば、再検討しなければいけないでしょう。
もしかしたら、俺に王座を渡したかったけれど、行方不明で渋々玉艶様になったのかもしれませんからねぇ。」

にやにやとあの魔女が嫌悪しそうな顔を作る。微かに魔女の顔が歪んだのが分かる。

「さて、皆々様。どちらが皇帝に相応しいのか決めてもらいましょう。この乱世、どちらがより治めるに相応しい力があるのかをね。」

俺は、傲慢だから。炎兄様も、白龍も救いたい。どちらかを取ってどちらかを捨てるなんて出来ない。皆、家族なのにどうしていがみ合わなければいけないんだろうか。

「それを決めるのは前皇帝陛下の御子息である、練白龍でどうでしょうか。
玉艶様か、私か、それともまた別の誰かを選んでいただきましょう。」

白龍を見つめ選択を促す。白龍は子供のときのように目を大きく開けていた。俺がほかでもない白龍に頼んだからだろうか。

「つぎの、皇帝は……。」

絞り出すその声が、あの魔女以外を言うのだと俺は信じて疑わなかった。俺ではなくとも俺以外の誰か、そう、白龍自身にだってなれる権利はあるのだ。

「練、………。練玉艶。」
「………え?はく、りゅう…?」

あの子は何を言っているんだ。あの魔女がこの国の皇帝になってしまったら。

「うふふふ。紅陽さん、もういいかしら?」
「白龍…。何でだ!白龍!今、お前が望めばこの国の皇帝にだってなれたのに!お前が望む、平和な国を作ることだって出来るのに。そこまで、お前は過去に捕らわれているのか……!」
「紅陽さん、貴方は今の自分の立場分かっているのかしら?」

魔女が嘲り笑う。俺にはそれに睨むことしか出来ない。

「少し心苦しいけれど、貴方には牢屋にいてもらいましょう。」
「…っ!」

周りに神官達が現れ俺を捉えようとする。触れようとする手を振り払い叫ぶ。

「触るな!汚いその手で俺に触れるな。
連れゆかれなくとも自分で行ける。……皇太后陛下、あなたのお心に感謝いたします。」

何故、あの魔女が俺を殺さないのかは分からないが牢屋などスグに抜け出せる。あんなもの金属器使いには造作もない。

「紅陽さん。まだ貴方とは話したい事があるわ。一緒にいきましょうか。」
「………はい。」



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