呪いの情愛

からから、音をたてて


あれから1週間経った。
準備と言ってもただの掃除。
部屋の整理をすればいい。王族の私室だから掃除婦達が触れないんだ。にしても、今までこれを王族の誰かがやっていたと思うと少し笑える。

白龍の部屋に入り掃除をする。と言っても白龍は部屋に物をあまり置かないらしくただ埃を取るだけだ。だが、本は大量にあり書庫に無かったものまである。興味がそそられて1冊手に取ると中から1枚紙が出てきた。

「……なに、これ。」

それには書き殴ったように"殺してやる"と何度も書かれていた。その本の表紙を見るとただの薬草の本だが、中を確認するとそれは、日記であった。最初の方には拙い字でその日に起こったことなどが書かれていた。だが、ある日にちを境に全く様相が変わっていた。それは、あの火事が起こった日。内容は嘆きに変わっていた。そして、炎兄様やあの魔女への復讐の誓い。パラリ、と次のページを捲ってみるとそこは破れていた。出てきた紙をそこに合わせると嵌まる。

「決心を弱らせない為に、何度も読んだのか。」

ちぎった跡ではない。自然と破れ落ちた。
あの魔女や炎兄様達に復讐を誓ってからその時の気持ちを忘れないように何度も読んだんだろう。
……白龍のあの日からの人生はなんて、なんて悲しいものなのだろうか。家族、しかも実の母親に復讐を誓うなど。俺だったら狂ってしまう。

「白龍……。俺は君を助けたいんだ。…でも、俺の言うことなんて君は戯言の様にしか聞こえないんだろうね。どうすれば、君は上を向いてくれるのかな?」
「それは、貴方がずっと俺の味方でいてくれるのなら叶いますよ。」
「え?」

誰もいないと思っていた部屋にもう一つの自分以外の声。見るとそこには白龍が立っていた。


「白、龍?なんで…まだ予定日じゃないのに…。」
「早く来れたんですよ。」

何処か暗い影を宿した目で俺を見る白龍。一歩白龍が近づくとぞわりと悪寒がした。思わず後ずさると一瞬悲しそうな顔をした。それを見てしまったから。もう、動くことができない。

「どうして、置いていったんですか?どうして、逃げたんですか?」
「そ、れは……。」
「貴方と俺は唯一あの悲惨な場所に居合わせ生き残った王族だ。なのに何故!
………あぁ、そうか。ねぇ、紅陽さん。まだ貴方は紅陽なんですか。何も知らない紅陽などいなくなれ。俺の良心を返せよ。」

首を絞められ息がつまる。どんなに必死に腕を引き剥がそうとしても力が及ばない。目が霞み意識が朦朧としてくる。それでも、俺は白龍の事を嫌いにはなれない。殺されそうになっているのに。無表情の顔の中にも悲しそうな表情が出ていて思わず手を伸ばした。

「あ、…は。く、は……く、りゅー。」

か細い声に白龍がハッとして手を離してくれた。足りない酸素を思いっきり吸い込みむせる。

「ゲホッゴホッ…。はー、びっくりした。」
「あ、あ…、紅陽、さん…。おれ、は。」

自分の手を信じられないものの様に白龍は見る。俺は白龍に近づきそっとその手を包んだ。

「大丈夫だよ。俺はまだ生きてるから。だからそんなに自分を責めないで。」
「なん、で。俺は、貴方を殺そうとした、のに。」
「一緒に泣いてあげると約束したじゃないか。俺は今白龍がどんな気持ちでここにいるか分かってるつもりだよ。だから、尚更白龍と共にいたいと感じるのかもね。」

大丈夫、そう簡単に死なないから…。そういって白龍に笑顔を見せた。すると、ホッとしたように緩い笑顔を見せてくれたのでよしとしよう。

「ほら、白龍。帰ってきたばかりで疲れただろ。今はゆっくり休みな。」
「……はい。」

頷いたのを見届けて俺は、白龍の部屋を出た。そして、誰にも見つからないようにそそくさと自室に戻る。そして、鏡を見てみるとやはり手の跡が残っていた。

「あー。やっぱりなぁ。」

結構な力で絞められたから跡が残って当然なんだけど、くっきりと人の手の形が残っちゃってるんだよな。包帯、で隠すのもあとで炎兄様に何か言われそうだし。首元まで隠す服ないのかな。

「……侍女さん呼ぶか。」

首元まで隠せる服を持ってきてもらおう。


***

「きゃー!こちらもお似合いですね!」
「ここの髪飾りは金の方がいいんじゃない?」
「うーん、そうするとこちらを赤にします?」

侍女を呼んでから、ここは台風に激突しているんじゃないかと思うくらい騒がしい。首を隠せる服を下さい。と言っただけなのに何故こんなにも着せ替え人形のようにされているんだ?服はもう貰ったからそれだけでよかったのに。化粧をさせられ、髪飾りをつけられ…。俺は女子じゃないぞ!

「あ、の。もうそろそろ時間なのでいいですか?」
「あらやだ。私達ったら!紅陽さんがとてもお綺麗なのではしゃいじゃったわ。白瑛様や紅覇様もお綺麗だけれど王族の方だものねぇ。」
「紅陽さんはお綺麗な方だからついはしゃいじゃいます!」

はははっと乾いた笑いをだし、俺は内心ため息を吐いた。炎兄様の従者として思われるのはいいんだが、それでお人形のようにされるとは。

「では、俺はこれで。」

そそくさと自室から立ち去り炎兄様の元へ向かう。というか自分が今どんな格好してるか分かんないんだよな。変ではないはずだ。可愛いとかなんとか言ってたから。
えーと。たしか炎兄様は書庫にいるはずだ。

「炎兄、さ…ま……。」
「あら、………紅陽さん、よね?」
「白、瑛様。いらしてたんですか。…タイミング悪く入ってしまいましたね。私の用事は些末な事なのでどうぞごゆっくり三人方でお話下さいませ。」

その場を離れようとしたら炎兄様に止められた。

「待て。紅陽。お前にも聞かせる話がある。」
「お話、ですか…?」

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