目に宿る不思議な光

からから、音をたてて


side白龍

何も出来なかった。あの人が、紅陽さんが1人で戦っているのに。迷宮で何も役に立ってない俺が戦うべきなのに。
紅陽さんが敵に飛ばされここからではどうなっているのか分からなくなった。

「紅陽……さん?」
「あらー、こんな所に可愛い坊やが。」
「っ!」

目の前に来られ慌てて飛び退く一瞬で分かった。格が違う。

「ふふ、かぁわいい!そういう、ちょこまか動く姿見ると虐めたくなっちゃう。」

ニタニタと笑う笑い方に寒気がした。こいつらは人を殺すことに何も抵抗がない。それが、常人にとってどれ程怖いか。

しかし、俺がやらなければ誰がやる!

今戦えるのは俺しかいない。頼るな、1人で出来る。今の俺はザガンを持っている!


***

幾分か経ち、そろそろ魔力が尽きてきた…。途中アラジンが起きたがそれでもまだ、勝ち目がない。このままでは、殺られる。

「ぅっ…。」
「アリババ殿!」
「な、なんだこれ!」
「外に、アル・サーメンが待ち受けていたんだ!」

その瞬間、爆風が俺達を攻撃した。アリババ殿はとっさにモルジアナ殿を庇ったらしくもろに当たっている。という自分自身も深手を負い立ち上がれない状態なのだが。
モルジアナ殿が立ち上がろうとする。やめろ。貴女では勝ち目がない…。
そう言いたいのに声すらでない。
やめろ、やめてくれ。立たないでくれ。もう、無理だ。

ふわりと俺の前に何かが落ちてきた。
白く、柔らかいもの。これは…。

「は、ね?」

白く輝いていたと思えば、今度は紅く輝きそして蒼く輝く。様々な色に変化し見ている者を惑わす。
俺の目の前に足が降り立ったと思えばその足は敵の方へ向かってゆく。
誰だ。仲間なのか、それとも……。

「よくも、俺の弟や友人を傷つけてくれたな。」
「あら!貴方、まだ生きてたの?」
「お陰様でな。お前の荒い技は俺を殺すまでに至らなかったよ。」

呆れたように笑う紅陽さんはどこか歪で美しかった。見た者全てを魅了し、溺れさせるような、麻薬のような甘美な姿。

どうしたと言うのだろう。先程までと同じ姿なのにとても欲しくて欲しくて堪らなくなる。
紅陽さんを自分のものとしてしまいたい。
……だめだ。なんてこと考えている。

「さて、裁きを始めようか?」

そう言って妖艶に笑う紅陽さんは多分、ここにいる全てのものを我がものとした。


sideend

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