時間を止めて

からから、音をたてて


目を開け見た光景に俺は絶句した。

「だ、れだよ。こんなことする奴は…。」

トランの民が3人の人間によって蹂躙されている。
叫び逃げゆく人をも逃がさないとでも言う様に嬲られ殺されていく。

「あらん。起きたのかしら。ねぇ、金属器使いさん。」

目の前に巨大な手が迫り体を握りしめられた。

「かはっ。」

息ができない。体が潰される。バキッボキッと骨の折れる音が聞こえた。やば。腕折れた。これじゃあ戦えない。

「紅陽さん!」
「はく、りゅー。…逃げ、ろ!早くここかぁああ゛ぁあ゛!」

握りしめる力がさらに強くなる。意識が、飛ぶ。


チャリン

手の甲に針が当たった。俺は、今金属器を持っている。あの子達を守る術を持っている。今使わずしていつ使う。
俺は2人のジンに王の器であると選ばれた。俺自身、そこまでの器があるとは思っていない。けれど、このふたりは俺に力を託してくれた。そして、今その1人がここにいる。大丈夫だ。皆を守れる。

「……っ情愛と堕落の精霊よ。汝と汝の眷属に命ず…我が魔力を糧として…我が意志に大いなる力を与えよ!出でよシトリー!!!」

背中に紅く金色に輝く翼が生え、手足にも羽毛のような羽が生える。服は紅く薄いベールのようなもので上半身は覆われその下は何も無い。下半身は袴のような金色の布で覆われている。首、手首、足首にはそれぞれ紅く輝く輪で彩られている。

「……触るな。」
「ん〜?」
「私に触るなと言っている。その顔の横についた耳は飾りか。その汚い手で私に触れるな!」

私を掴んでいた腕を燃やし尽くして離させる。醜い手で触れられてしまった。これは、排除しなければ。

周りに炎を浮かび出させ巨大な手に向かって攻撃する。

「死ね。」
「あら、まぁ。でもねぇ、これでどう?」

周りにいたトランの民を掴み盾にする。その内の1人がカイル君で……。
私の炎は止まらない、止まれない。

「え……ぁ、やめろぉぉおお!」

走ってカイル君に炎が当たる前に抱きしめる。他のトランの民は守れなかった。数秒後に叫び声が聞こえる。俺にも炎が当たり背中を焼く。

「ぎゃあああああ!!!」
「っうぐぅ。」

その声にびくりっと動くカイル君をぎゅうっと抱きしめる。ごめんな。ごめん。君の仲間を俺の炎が殺してしまった。

『お、兄ちゃ…。』
『なんで、ここに来た!俺が、遅れて……いたら……。』

涙が溢れてくる。溢れて溢れて止まらない。ごめんね、と虚ろに呟く。だけど、そこに留まっていたのがいけなかった。

「うぐっ!ぁあ゛ぁあ゛!」

また巨大な手に握り締められる。そして、吹き飛ばされた。

「かはっ!」

木にぶつかり止まったのはいいが、打ちどころが悪かったらしい。目の前が霞む。カイル君が何か言ってるけど分からない。

やば、意識、とぶ……。


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