刹那の邂逅

たぶん、それは若気の至りというやつで


「もっと、相応しい人がいるはずです。」
「あぁ、そこのアリババ君とか?アモンと同じ主ってのがやだしなにしろそいつは金属器1つ使いこなせていない!」
「ア、アリババさんがダメだったとしても紅陽さんとか!」
「その髪が長い子ね……。魔力はこの中で一番あるけど、もう金属器2つ持ってるみたいだし?俺じゃなくてもいいでしょ。」
「ええ。その通りですジンよ。俺には金属器を3つも持てる程の魔力を体内に維持出来ない。それに、貴方の能力は白龍にこそ相応しい。俺のような下賎の者が得ていいものではない。」

そうだろう。とザガンに目線を向けるとめを伏せられた。それは、事実だということなのかそれとも全く違った意味なのか判断はつかない。だが、今はザガンの目に白龍が王の器として見れたということ。それだけでいい。

「ひとまず、ここから出よう。怪我の手当もしたいしね。」
「そっすね!よぉーし!皆財宝持てるぶんだけ持ってこうぜ!」

いつも通りのアリババ君にクスクスと笑ってしまう。あぁ、やっと日常に帰れる。こんな所早く出てしまいたい。
へたりと床に座り込みうずくまる。
良かった。誰も殺さなかった。日常に戻ればそう人を殺すことも無くなる。

「紅陽さん。大丈夫ですか?」
「白龍…。少し疲れてしまっただけだから。大丈夫だよ。」
「そうですか。よかっ…痛っ!」
「大丈夫か!?……へび?」
「はい。…そこまで痛くありません。」
「一応、包帯巻いとこうな。」

俺の言葉に遠慮する白龍だけど、こういうのは早めの対処が重要なんだよな。懐から包帯を取り出して白龍の手を取り、巻く。
こんな綺麗な手がこれから戦いに身を投じるようになる。なんて世界なんだろう。子供が戦う、戦える力を持ちえてしまう世界。変えたいという思いは強いけれど、俺には力も財も権力もカリスマ性も…何も無い。ただあるのは分不相応な肩書きだけ。

「白龍。俺はね。君に死んで欲しくないんだ。」
「え?」
「だから、戦って欲しくない。君が今日得た力は白龍自身を守る為に使って欲しい。復讐なんて事の為じゃなく。
俺は楽しみだよ?白龍が白瑛様と笑って炎兄様達と話している姿を見るのが。」

白龍を抱き寄せ頭を撫でる。この子は俺には計り知れないものを抱えている。抱えさせられてしまったんだ。守らなければ倒れてしまうのに、今まで誰も支えてあげられなかった。俺も、白龍から逃げていたんだ。だから、今度こそは。絶対にこの子を離さない。離してなるものか。

「紅陽さん…。い、痛いです。」
「あ、ごめん。
…帰ろうか、白龍。俺達がいるべき場所へ。」
「はい。」

足元に魔法陣が浮かび上がり体が浮く。
ふっと気を抜くと、意識が持っていかれそうになる。だけど、ぎゅっと白龍を抱きしめる手は離さなかった。
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