また笑えるかな

たぶん、それは若気の至りというやつで


その後シトリーは色々と俺を触ったあと金属器に戻っていった。出てくるのは別にいいんだけど魔力が減る所がいやだよね。まぁ、蓄えはいっぱいあるから良いんだけどさ。

「ごめんね。足止めしちゃって。行こうか。」
「はいっ!」

俺の掛け声と共に歩き出した。
けれど、この迷宮はなんというか迷宮生物が多いな。数もそうだが、種類も多い。ザガン故か、それとも。

「ザガンの命令以外で襲って来ねーし、どこの迷宮もこうだったらいいんだろうな。」
「やぁー気に入ってくれて嬉しいよ〜!僕の迷宮はイカすだろう?気分が良いから、君たちにはいいもの見せてあげるよ〜!そこの横穴に寄り道してごらんよ。君たちにとっても、有益な情報があると思うよ。」

ちらりと横穴を覗く。そこは悲惨な状況だった。人が木の苗木になっていて、迷宮生物を生み出している。ああ!やはり、多いと思ったんだ。この迷宮には生物がいすぎている。
くいっと服を引っ張られ下を向くと迷宮生物が服を引っ張っていた。そのままついていくと木の根元まで連れていかれ木に縛り付けられた。

「なっ!」
「紅陽さん!」

木の枝が俺の体に纏わりつこうとしている。気色悪い。いやだ。気持ち悪い。

「…触るんじゃねぇ。てめぇらの養分になんかなってやるかよ。俺は、ここで死ぬわけにはいかねーんだよ。」

無理やり、木の枝を引き剥がす。その時に服の背中が破けてしまった。やべ。これ借り物だった。ま、シンのだからいいか。

「紅陽お兄さん大丈夫かい!?」
「ああ。行こう。こんなふざけた事を終わらせてやる。」

ジンの真似事なんてしてるんじゃねーよ、迷宮生物如きが。あー。ムカつく。ジンは王になるために入った人間を試す為にこんな事をしている。だから、俺達に危害を加えるのはいい。けれど、近づいただけで取り込んで迷宮生物の苗床にしてるなんてジンの格を下げるだけだ。それを、生かさせてもらえてる分際で真似事をして、格下げしてるなんて許さない。

「ぶった斬ってやる。」

トランの民達の木が茂っている場所から走る様に出ると、獣が襲いかかってきた。無意識的に蹴り飛ばす。しかし、獣は飛ばされた反動をつけまた襲いかかってくる。

「紅陽さん!早いですって!っうわぁあ!」
「アリババ君。早く、魔装しな。君は戦えるんだろう。一番戦えるやつが戦わずして誰が戦うんだ。」
「……っ!分かりましたよ!」

……辛く当たりすぎた気がする。少し冷静になろう。俺は大人だろ。何をそんなに激情することがある。落ち着け。割り切れ。これは、ザガンの迷宮だと。生命を操れるザガンだからこそ起こりうってしまうのだと。

「……割り切らなければ。」

こいつらは、ただの迷宮生物で魂なんてない。なにも、考えていない。だから、根源の奴を潰せばいい。ジンの尊厳を地の底に落とすような奴だ。容赦なんていらない。

「紅陽さん、大丈夫ですか?」
「あぁ……少し、気分が悪い。あ、れ?モルジアナ、その腕輪…、そっか。良かったな。」
「はい。」

照れたように笑うモルジアナは癒しだ。可愛い。頭撫でてもいいかな。とか思ってるとアリババ君達に呼ばれた。

「紅陽さん!モルジアナ!行くぞー。」
「ああ!今行く。」

***

次の部屋に行くとそこにはザガンらしき人物が座っていた。けれど、この感じ、どこかジンではない。やはり迷宮生物が偽っているのか。

「紅陽様じゃないですか!」

背後にぞわりとした悪寒がはしる。誰だ、今の声は。アリババ君達は今は迷宮生物に付きっきりだし、モルジアナは下の方の植物を相手にしている。ここに他には誰もいないはず。

「忘れてしまったんですか?私、イスナーンですよ。」
「イス、ナーン。」

紅陽様、貴方は覚えていないのですか。

そう言って彼は悲しげに笑った。やめて、そんな顔しないで、俺はあなたにそんな顔をして欲しくない。だから、俺はあなたに言うんだ。

「ようやく、貴方に会えた。」

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