取り戻したいんだ

たぶん、それは若気の至りというやつで


白龍様が落ち着いた頃アリババ君が声をかけた。白龍様、大丈夫かな。

「……白龍、そろそろ行こうぜ。」
「……先に行ってください。もう、俺は同行できません…。」

アリババ君の周りのルフがキラキラと白龍様を包む。その光景に俺は見とれてしまった。とても綺麗で白龍様を慰めてるみたい。きっと、アリババ君はとてもいい子なんだ。知っていたけれど、改めて実感する。こんなにも心地がいいルフあんまりいない。

「…さっきの、お前のあれはさ。別に恥ずかしいことじゃねーだろ?それだけお前が何かでかい問題を抱え込んでるってことだろ…?その…お前の大事な何かのためによ…。生きてここを出るべきなんじゃねーのか?俺達の力を借りるべきだよ。一人じゃ何もできねーぜ…。」
「うるさい!!俺は…あんたとは違う!!一人でも責任を果たさなきゃならない!できないからじゃ済まされない!!俺は一人で果たさなきゃいけないんだ!!」

白龍様は感じられないのだろうか。このルフの暖かさを。優しさを。癒しを。何か声をかけようとした瞬間アリババ君のルフがさらに広がった。この空間全てを覆い尽くすみたいに大きく。

「一人じゃ何もできない!!」
「っ!?」
「聞いてくれ、白龍!俺もバルバッドで…最初俺がなんとかしなきゃ、してみせるって一人で突っ走ってた。でも、それは間違ってた。もっと早くにみんなの力を借りていれば…もっと大勢助かったはずだ。カシムも…たすける方法だって、きっと、あったはずなのに。それを、俺は、―……俺が殺した!」


優しい人。貴方のせいじゃないのに。でも、それはこの世界では、いやどの世界にも良くあることだ。他人の責任を自分の責任にさせられる。平和な世界でもそんな事が起こりうるんだからこの世界なら尚更。だけど、賢い人は皆諦めるんだ。しょうがないって。逃げるんだ。責任から。でも、この子はずっと背負っていく。逃げない。……逃げられないのかもしれないけどね。
アリババ君、君は命を削る生き方をしている。何時か壊れてしまいそうだ。その危なさが今の暖かさを出していると思うと俺は少し悲しい。

「紅陽さん?」
「なに?モルジアナ。」
「いえ、泣きそうな顔をしていたので……。」
「あはは。そんな顔してた?んー。少し、さ。少しだけこの世界が嫌いになった。輝かしい未来が待っている君達はまだ子供なんだよ?なのに、神は試練ばかりをお与えになる。愛されるべき子供たちばかりに……。なーんて、冗談。少し眠くなっただけだよ。」

そうですか。と言いながらモルジアナは白龍様達に視線を戻した。俺もそれに倣って目線を戻す。

「無力な俺に力を借してほしい。あなたたちと一緒に、どうか戦わせてください。」
「ああ!」

どうやら、こちらは解決したようだ。良かった…。ほっとして口元が緩んだ。すると白龍様が俺に近づいてきて抱きついた。は?なに?

「白龍様?どうかした?え?俺何かやった?」
「紅陽さんですよね?戻ってきて本当に良かった。途中で紅陽になった時はどうなるかと…。」
「白龍様。大丈夫、俺だよ。記憶も全部戻った。俺が紅炎様の従者をしていた事も、あの火事の記憶も、今みたいに昔は白龍様がよく泣いていたこともね。」

真っ赤になってる。あーもう。可愛いなぁ。頭を撫でくりまわしたいけど我慢だ我慢。俺は白龍様よりも下なんだから。

「あの、紅陽さん。もう、俺の事を様付で呼ばなくていいですよ。俺は貴方の弟ですから。」
「………。」

ちょ、待て。落ち着け俺。白龍様が……白龍様がでれ、デレたぁぁあ!録、録音!ってここにはICレコーダー無いじゃん!あ、ああ。もう一回聞きたい。けど、聞いたら聞いたで崩れ落ちるからだめだ。

「紅陽さん?」
「……うん。分かった。白龍。」

嬉しくて満面の笑みで笑ってしまった。にやけた顔が収まらない。変な声出そうになるけど我慢。もう、俺この迷宮で白龍に殺される。

さらに白龍を抱きしめようとした時、俺の懐に入っていた針が光だしそこからシトリーが出てきた。え、なに勝手に出てきてんだし。魔力、使うなよ。

「我が王ぉ。やぁっと記憶戻ったんだねぇ。随分と時間がかかったようだけどぉ?」
「ん?あ、そっか。シトリーは俺と会うの初めてか。」

ちらりとアリババ君達を見てみると口を開けてこっちを見ていた。うん。そうなるよね。アリババ君のアモンはオッサンだしね。シトリーはいうなればイケメンだ。タレ目に泣きボクロ、スッと通った鼻筋、など女性が見たら放っておかない顔をしている。………俺の表現力の無さは置いといて。ここに女の子もいるんだけど…と思いながらモルジアナを見てみるとなんら表情が変わってない。あ、れ?シトリーイケメンなはずなんだけど、なぁ?

「でぇ?」
「はいはい…。煌帝国練紅陽。貴方には記憶がない時に王として選んでもらった。記憶が戻った今、貴方は俺に付いてきてくれるか?」
「ああ。我が王。私は貴方の魂について行く。魂は決して裏切ることは無い。」

シトリーはいつもの間延びした口調ではなくしっかりとした口調で答えた。

「ありがとう。シトリー。」
「別にぃ。にしても、やっぱりぃ、この髪の毛いいねぇ。艶もいいしぃ、サラサラだしぃ…。オレも女になる時ぃ、これくらいにしようかなぁ?」
「いや、もうこれ以上美女追求しなくても…。」

シトリーは今は男の姿だけれど女にもなれる。だから、美女になるために余念がないんだよね…。遠い目になってしまう。うーん。一応精神年齢的にはさ俺が1番年上なわけじゃん?なのに、可愛いとか毛艶がいいとか言われても、ね?


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