眩い暗黒

たぶん、それは若気の至りというやつで


ふらふらと歩いていたら広場みたいな所に出た。そこの中心では俺と同じような格好をした女性達が綺麗な舞を踊っていた。
目を細めて眺めながらまた酒を煽る。こんな気分が悪い時には酒に限る。にしても、綺麗な舞だな。あの赤髪の子なんて特に。って、あれはモルジアナか。
酒に酔ったからだろうか。俺は気がついたらモルジアナと共に踊っていた。周りの視線が俺とモルジアナに集まる。少し恥ずかしいけど、それ以上に楽しい。モルジアナと共に笑い合うと心が温まった。
一段落して舞台からモルジアナと降りるとアラジン達が近寄ってきた。

「紅陽お兄さん、モルさん!すごく綺麗だったよ!」
「本当綺麗でした!でも、紅陽さんって男……。」
「ありがとう、二人とも。アリババ君は余計なこと言わないでくれるかな?これでもコンプレックスなんだよ女顔。」

3人で笑っているとモルジアナがじっと俺を見ていた。どうしたのだろうと首を傾げるとモルジアナも同じように首をかしげるからその場に沈黙が陥った。

「あははは!モルジアナ、この人は紅陽さんはちゃんとした男の人だよ。」
「ですよね。すいません。バルバッドでも女装姿の方が印象にあったので本当はどちらなのだろうと……。」
「れっきとした男だよ!?」

あぁ、楽しい。こういう関係をシンドバッドと作れたら良かったのに。またシンドバッドのことを考えている。やだなこの思考。酒だ酒。酒を飲んで忘れよう。
また、酒を数杯煽りいい気分になる。アリババ君たちがなんか言ってるけど聞こえにくいなぁ。というか周りが回る。どこか上か分からない。

「わぁ!紅陽さん!」
「紅陽お兄さん、顔が真っ赤だよ?」
「大丈夫ですか?」

もう、たっているの無理。ふらーと後ろに倒れていく体をモルジアナが支えてくれた。

「ごめんね。モルジアナ。」
「いえ。私がおぶっておきますね。」
「ありがとー。」

いつの間にかアラジン達がいなくなってる。薄情な奴らめ!モルジアナはいい子だなぁ。
ゆらゆらと揺られながら街の景色を楽しむ。はぁ、綺麗だな。

「モルジアナ重かったらそこら辺に置いておいてもいいからな。」
「そんなことしたら危ないじゃないですか。」
「大丈夫だよ。だって、シンドバッドの国なんだぞ?危ないわけが無い。」
「シンドバッドさんを信頼しているんですね。」
「信頼……してるのかなぁ。確かにシンドバッドがいるってだけで安心できる。でも、そう思っているのは俺だけだったようだけどね。」

モルジアナに背中から降ろしてもらうとそばにあった椅子に座り目の前にある机に上半身をうつ伏せた。あー。ひんやりして気持ちいい。

「紅陽さん……。これ一緒に食べましょう。」
「んー。俺はいいや。それにしてもどうしたのそれ?」
「マスルールさんに貰いました。ほらあそこにいますよ。」
「ほんとだ。」

元気づけようとしてくれてるのは分かるんだけどまさか、ここに来てしまうとは。向こうにはシンドバッドがいる。今は多分マスルールとシャルルカンで見えていないが、時間の問題だろう。でもここから動きたくない。今動いたら吐く。
ちらりとシンドバッドがいる方に向いたらまだ女を侍らしてやがった。イラつくな俺。耐えるんだ。どうせ、シンドバッドは俺自身を見てくれはしないのだから。
腕を組みその上に顔をのせ、誰にも今の顔を見せないようにする。
絶対に今の俺の顔は醜い。もうこれ以上嫌われたくない。だからどうか泣いている姿だけは見ないで。俺は強い人でいなければいけないのだから。

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