ありし日の

たぶん、それは若気の至りというやつで


「兄様!兄様、見てください!こんなにもお花を貰ったので花冠にしてみました!」
「紅陽…なぜ、それを俺につける。」
「恰好いい兄様には、王冠がひつようです!でも、僕には金で出来た王冠は作れないから花冠です!」

そういう僕に兄様は薄く笑うと頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら撫でてくれた。やっぱり兄様は恰好いい。こんな何の取り柄もない僕にも優しく接して下さる。僕はほんとは兄様に王様になって欲しいけれどそれは無理だそうだ。白雄様と白蓮様がいるからだそうだ。僕にはよく分からない。ただ、兄様はそれでいいと思っているから僕もこの気持ちは伏せておく。

「あれ?紅陽じゃあないですか。どうしたんですか?こんな所で。」
「あ、明兄様。こんにちは!実はね……。」

あれ、なんで、明兄様が歪むの?兄様も遠ざかっていく。まって、待って!

「紅陽?どうしました。」
「あ、紅明兄様。いえ、少し寝てたみたいで。」
「そうですか。あ、そういえば紅炎兄様が読んでいたよ。」
「紅炎兄様がですか?分かりました。行ってみます。」

少ししてから紅炎兄様の部屋に行くとそこには巻物を見ていた兄様がいた。話ってなんだろう。

「紅炎兄様、来ましたけど……。俺、なにかしました?」
「お前は確か、視えるんだよな。」
「この鳥みたいな形のものですか?それならば視えますけど。」
「それについて知りたい。教えろ。」

徐々に紅炎兄様の声が小さくなっていく。また、聞こえない。また紅炎兄様が小さくなっていく。どうなっているんだ。

「きゃーーーー!!!」
「逃げろ!早く!」

いつの間にか目の前には燃え盛る家があった。赤々と炎が上がり、周りを燃やし尽くしていく。呆然としていると炎が服に燃え移る。

「い、や……。たすけ、て。」
「紅陽!?」
「……白雄様?」
「こっちに来い!走れ!」

無我夢中で走った。白雄様と白蓮様そして、白龍様と共に走った。なのに、白雄様と白蓮様は途中で別れてしまった。あのまま一緒に居れば多分、俺達も死んでいた。白龍様を抱えて走る。一応、白雄様がかけてくれた――があるけれどいつまでも居たらそれも乾いてしまう。

「白龍様……。必ず、必ず助けますから。しっかり捕まって下さいね。」

涙に濡れる顔が縦に振られるのを確認してまた出口に向かって走った。

「紅陽様!それに、白龍様も!良かったです。白雄様と白蓮様は……。」
「はっ……はぁ、多分、もう……。それよりも、早く白龍様を………。」
「紅陽様!?」

近くにいた男に白龍様を渡して安心したのか体から力が抜けていく。あ、意識も遠くなっていく。


「でぇ?君たちの誰が王になるのかなぁ?オレ的にはぁそのなっがぁい赤髪の子がいいなぁ。」
「紅陽か?」
「そう。その子ぉ。オレちょー好みぃ。」
「だと言っているがどうだ紅陽。」

目の前にでかい巨人が居た。え、まて私は何をしていた。……そうか、紅炎様とダンジョン攻略に来ていたのか。

「紅炎様じゃないのか?」
「だってぇそいつ俺、きらぁい。真面目すぎてやだぁ。」
「私は別にいいですけど。」
「俺も構わん。」
「そうですか。……これで私も紅炎様と同じ金属器使いなんですね。助けて貰ったこの命、国のために、紅炎様の為に使います。」
「ああ、期待している。」
「はい!」


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テーマ「人外ファンタジー」
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