宵の明星

Step.96 2


宵は山の頂上に着くと、そこに建っていた家屋に入っていった
堂々と気配を出しながら奥へと進んで行くがここの主は一向に動こうとはしない
宵が主――牛鬼が居る道場の前にたどり着くと勢いよく扉を開けた

「何用だ、夕月」
「聞きに来た
牛鬼、お前は何がしたい?」

その問いに牛鬼は鼻で笑うと答えた

「リクオの意識を確かめるために
覚悟を確かめるためにしていること
破門は承知している
だが、私が愛したぬら組が無くなるのだけは絶対にいかん」
「そう、お前は考えるのか牛鬼
今のリクオ様を見て覚悟がないと言うのか
じゃあ、窮鼠の件はなんだったんだよ」
「それは、人間を助けたかったからだろう
ではもし我がぬら組と人間が双方危機に陥ったらリクオはどうすると思う
リクオは人間を取るだろう
私はその思考を正したいのだ」
「正した後お前は死ぬのか?お前は役目は終えたと自分を制して命を消すのか?
俺は別にお前がリクオ様をどうしようがどうでもいい
例え、お前がリクオ様を殺そうとしても俺には関係ない
だが、お前はリクオ様を殺してしまった後お前も死のうとするんだろ?」

俺はそれが嫌なんだと、いい俯く
宵の言葉に牛鬼は目を見開いた
沈黙が数秒続いた後ある気配がした

「夕月、退いていろ
私はリクオの覚悟を確かめる手出しは無用だ」
「何を言ってもお前は意思を変えないのか…一先ず、俺は隠れていよう」

宵は柱の陰に隠れると気配を完全に断った
道場内から聞こえるリクオと牛鬼の声
それに、顔を悲痛に歪めているのを誰も知らない

「どうして分からないのか…
あんなにもぬら組を愛しているお前が」

ふっと息を吐いたときドクンッ――と心臓が跳ねた

「ぅっ……はっぁっ…つっ…」

心臓近くの服を掴むが痛みは収まらない
さらに強く痛みが強くなっていく
一際強く痛みがきて宵は気を失った




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