side宵
鴆にはああ言ったけれど正直まだ道具になりたいと思っている
部下なんてなりたくない
感情なんていらない
感情なんてもの持ってしまったらそれはただ、辛いだけ
俺は……リクオ様の土台になれればそれでいい
泥まみれになって、這いつくばって、上を見上げながら期待して……そんなんでいいんだ
だから、早く三代目になってくれ
貴方の側にいると憎しみが湧いてきてしまうから
鯉伴は一向に気づく気配がないから俺から離れられない
早く早く手の届かない場所に行ってくれ……
***
「夕月、起きろ」
「………はっ…申し訳ありません鯉伴様
考え事を少々していました」
気がつくと鯉伴が此方を見ている
周りの妖怪達は話し合いも終わり食事をしていた
やってしまった…
考え事をしていて周りが見えていなかった
「少し……気分が優れないので俺は下がってますね」
こんな醜い感情が顔に出ているようでまっすぐに鯉伴を見れない
部屋を出て自室に戻ろうと歩いていたらリクオ様がふと気になった
様子を少し見てみようと襖を開けると起きていたリクオ様と目があってしまった
「あ……リクオ様、お機嫌いかがですか?」
「夕月か、まあまあだよ
だけど、明日からは学校行かなきゃね!
そうだ、ゴールデンウィークに清継君達と捩眼山に行くことになっちゃった」
「捩眼山、ですか…」
牛鬼が治めている土地だったよな?
今、リクオ様はとても立場が不確かな所にいる
その時に牛鬼の所に行っても良いのか
牛鬼はとてもぬら組を愛しているだからこそ今のリクオ様を認めていないのではないか
そんな風に感じる
「夕月……?」
「それ、俺も一緒に行ってもいいですか?」
「え、夕月も?多分構わないと思うけど」
「ありがとうございますリクオ様」
捩眼山で何が起こっても対処できる様に今から準備しておかなければ…
まあ、雪女や青田坊が一緒に行くんだろうけどやはり二人だけでは心許ない
でも一先ず目下の課題は如何に鯉伴を説得するかだな