宵の明星

Step.96 6

「……ん?」

宵が木の上で精神統一をしていると、どこかで巨大な畏がぶつかりあっているのを感じた。

「この感じ…。嫌な予感がする。」

木の上から飛び降り、畏の方へとひた走る。その横に冷麗が並び宵に叫んだ。

「どうしたの!?そんなに慌てて。」
「嫌な予感がする!リクオ様になにかあったのかもしれない。」

宵と冷麗がリクオ達の元へ付くと、まさにその瞬間鬼童丸がリクオに一撃を食らわそうとしていた。宵はすかさず二人の間に飛び込み、近くにあった木の棒を掴む。そして、畏を木の表面に集中させ刀の衝撃に耐えた。
だが、それも一瞬のことで、鬼童丸は冷麗の氷により体を固定され動けなくされた。

「イタク…あなたリクオの教育係でしょ?間の抜けたことしちゃダメよ。」
「てめぇ。何もんだ。リクオ様に何をしに来た。」
「お主、その顔…!くくくっ!羽衣狐様が言っていたのはそういう事か。お前が忌み子かもうひとりの孫よ。」

鬼童丸の言葉に宵は歯を噛み締めた。持っていた木の棒を振り上げ打ち付けようとするがその前に鬼童丸が冷麗の氷を破ってしまう。その風圧で宵の右側の顔が顕になった。皆、その跡に息を呑む。唯一、鬼童丸は不敵に笑っていた。

「遠野を全滅させることが私の目的では無い。だが、ぬら組に手を貸したことはおぼえておこう。
………こいつは貰っていくぞ。」
「なっ!ぐっぅ。」

鬼童丸は刀の柄で宵の腹を強く打ち気絶させた。

「てめぇ!夕月をどうするつもりだ!」
「この忌み子は羽衣狐様がご所望だ。何をするかなど私は知らん。」
「忌み子だと?」
「あぁ、貴様らは知らぬのか。こいつは…。」


鬼童丸が放った言葉はその場いる全員を固まらせる。あまりに衝撃的で、悲惨だった。小さいその身には重すぎる呪いだった。


***

鬼童丸が宵を連れ去った遠野では深い沈黙に陥っていた。鬼童丸から聞かされた、聞かされてしまった宵の真実。それが、それぞれの心に重くのしかかる。

「夕月は……。俺の兄弟だって言うのか…?」
「……あいつは…。その事をお前に伝えるつもりはなかったんじゃないか?」
「なんでおめぇが知ったような口をきくんだよイタク!」

リクオはイタクの胸ぐらを掴み怒鳴る。イタクはムッとした顔をして怒鳴り返した。

「知ってたからだよ!俺もただ、偶然知っちまっただけだけどよ。そん時の目はこっちが恥ずかしくなるほどお前の事を想ってた。」
「じゃあ、なんで夕月は俺に言わねぇんだよ。」
「そんな事知らねぇ。けどよ、お前が生まれてからはお前の為に言わなかったんじゃないのか。」
「は?」
「異母兄弟か異父兄弟か分かんねぇがそんなの居たらお前は普通に人間として生きれていたか?」
「それは……。」

リクオはそろそろとイタクの胸ぐらを掴んでいた手を離す。じっと、宵が落としていった木を見つめそして、拾った。するり表面を撫でると決意したように虚空を睨んだ。

「……連れ戻す。その後に本人から聞いてやる。」
「ま、お前はどっちにしろ京都に行くんだろ?」
「あぁ。」



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