宵の明星

Step.96 5

「夕月、お風呂入っちゃって。貴方で多分最後だわ。」
「あぁ。分かった。」

宵は外にある風呂場に行き服を脱いだ。少しまだ今日イタクにやられた所から血が滲んでいる。ゆっくりゆっくりと湯に入り微睡んでいると、誰かが入ってくる気配がした。宵がそちらを向くとそれはイタクであった。

「……まだ、入ってなかったのかお前。」
「それを言うならあんたもだろ。」
「俺は、2回目だ。雨造と修行してたら汗かいたんだよ。」

チラリとイタクが宵をみると体の傷が目に入った。それに目が釘付けになる。

「何?」
「お前、その傷。」
「あぁ、これ?勲章だよ。」
「勲章だぁ?そんな傷が。」
「うるさい。良いんだよ。これは、鯉伴様とリクオ様を護れた証であり、俺への枷だから。」
「勲章だっつったり枷だっつったり何が言いたいんだお前。」
「……はぁ。この傷は、鯉伴様、あー、リクオ様のお父様な?を護って出来た傷。だから、勲章。でも、鯉伴様に刀を向けたやつは俺の母さんの体を使った。その時の絶望を、恐怖を、憎しみを決して忘れないための枷。」

宵が言い終わったあと沈黙が流れた。宵はため息をひとつこぼし、顔を拭った。

「なんで、お前俺にそれを言ったんだ。」
「んー。……君が優しいからかな。攻撃を受けた時、分かった。君はとても優しくて仲間想いな妖怪だってね。」

ふわりと宵は笑う。その笑顔は妖艶でどこか子供っぽさを残したもの。さらに、湯に濡れている事もあり、背徳感を出していた。それをイタクは真正面から見てしまい顔を真っ赤に染めた。

「あ、そうだ。リクオ様に敵が俺の母さんの体だってこと言わないでね。それ知ってるの今の所、俺と君だけだからさ。」
「はぁ!?んな大事なことなんで言わないんだよ!」
「………えー、言わなきゃダメ?」
「ここまできたんだから全部吐け。」
「じゃあ、裸の付き合いをしてくれたって事で教えてあげるよ。えっと、………名前なんだっけ?っていうか自己紹介互いにしてなかったね。俺は、夕月だよ。」
「イタクだ。ほら、とっとと言え。」
「もー、せっかちだなぁイタクは。」

一度口まで深く入り、意を決したかのように宵は立ち上がった。そして、イタクの上に覆いかぶさる。宵の長い金髪がイタクの頬にかかる。イタクは怒鳴ろうと口を開いたが、宵の泣きそうな顔に開いた口を閉じた。宵は顔を徐々に近づけ耳元で囁いた。

「俺は、リクオのお兄ちゃんなんだ。秘密、だよ?」

「は……はっ?」
「あー、も、無理……。」

宵はイタクにもたれ掛かるように脱力した。意識はない。

「おい!夕月?…のぼせてんじゃねーよ。」
「イタクー?どうした?って!こいつ昼間のじゃねぇか!」
「静かにしろ淡島。のぼせたらしい。そこにあるタオルとってくれ。」
「ほいよ。にしても綺麗な顔してんな。少し、リクオに似てるんじゃね?」

宵の頬を淡島がつつく。イタクは淡島の言葉に肩を揺らしたが何も言わなかった。



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