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ふわふわふわふわ

何か温かく柔らかいものに包まれている

気持ちいい…
ずっとこのままでいたい
そう思うとさらに温かく柔らかいものに包まれる
でも、包まれる度何かが体から抜けてゆく

それは絶対に手放してはいけないものだけどその何かが分からない
大切な大切な何かは完全に体から抜け出して遠くにいってしまった
その瞬間温かく柔らかいものは消え熱く硬いものが纏わりついた

思わず目を開けるとそこには眼帯をしてオレンジ色の髪をしている男の人がいた

「晃也!起きたんさ!?
リナリー!晃也が起きた!!」
「晃也…!よかった、起きて」
『誰、ですか…ここは…?』

男の人が目を見開いて俺の顔を見る
男の人の目はとても綺麗な緑色をしていて見とれてしまった

「晃也……?」
『晃也?違います、俺はレクアだ』

それにしても…
こんなところ見たことがない
廻りを見渡すと血だまりができていた

血液、血、ち、チ………


『うぐぅ…はっ、がぁぐっ』
「晃也?どうしたさ!?」
『あ、たまが…割れる!!』

殺して殺して殺した
人、動物、アクマ……
それに快感を覚えている俺
これは俺だ
この記憶は俺だ
だけど、この体のものではない…

『ぁあ゛っ…くそっなんで俺の記憶がこの子の体に入ってるんだ』

俺の記憶は瞬く間に頭の中を過ぎてゆく
だが、最後の俺が終わった時はとてもゆっくりゆっくり流れる

愛しい人に殺される
それが俺――レクアの最後

プツンと何かが切れた音がした

『ぁぁああ゛ああ゛ぁああ゛ぁ』
「晃也!?しっかりしろ!俺の声が聞こえるさ?」

声の方を向くと焦った顔に見えて…
またそれが俺の愛しい人と重なる

『や、だ…来るな…
来ないで…やだやだやだ!
……お願い、殺さないで』

あの時の恐怖が
あの時の悲しみが
あの時の悔しさが

この体を震わせる



「大丈夫さぁ〜落ち着け
オレはお前を殺したりはしないぜ
深呼吸してみるさ」

温かい腕の中に抱き締められ背中をとんとんっと叩かれる
そのリズムに合わせて呼吸も段々落ち着いてきた


この人は愛しい人とは違う
だけど、こうしてもらって喜んでいるのはこの体の主がこの人を愛してるからだろう
魂が抜けても喜んでいる体

『す、いません…取り乱してしまって
もう大丈夫ですから』

それが怖くてやんわりと体を離す
だけど、うまく体を動かせなくて倒れこんでしまった

「よっと、港に使者がきたらしい
このままで行くさ」
『えっ…あの!歩けるので下ろして貰えませんか?』

何故俺が横抱きで連れていかれているのだろうか…

でも、ここは気持ちいい…
眠い…

あぁ……
やはりこの子にも呪いがかけられているのか

こんなにも愛しい人が近くに居るのに眠くなってしまうこの子の体はもう…
長くはない


ごめんな…
俺があの時殺されなければ君はこんな思いをせずにいられたかもしれない

本当にごめんなさい

晃也――――――


***



ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

『なぁ…なんでそんなに謝ってんの?』

だって…俺は君を地獄に連れ込んだ

『そんなの今更だろ』

それでも、俺は君を巻き込んだことは変わらない

『はぁー…あのなぁ、俺は別にお前を責める気はねーよ
それに俺はこの魂をもって良かったよ
だって、この魂があったお陰でラビと会えたんだから俺はお前に感謝するよ』

でも、もしかしたらこの魂が無くても会えたかもしれない

『それは絶対にない
断言する

俺はこの魂を持たなければ絶対にラビと出会えなかった
この魂を持ったからこそラビとあえたんだ


だから

ありがとうな』

ありがとう、か…

君は本当に俺と違うな

今までのこの魂を持つ者はすぐ心の闇に捕らわれた
皆、呪いを憎み呪いに殺された

俺も…

俺は愛しい人に致命傷を負わされたけれど本当は生きれるはずだった
呪いが、俺を俺の体を殺した


『そして、転生して俺の魂となった』


そう
でも、君は今までのこの魂を持つ者とは違った
前世の記憶を持っていなかった

俺の記憶が無いということはその前の記憶も無い
辿っていくと、最初のこの魂の持ち主だった奴の記憶もなかった

けれど、君は直感で呪いを理解した
己を殺す呪いだと


君は異例だ
そして俺達の希望だ
戦ってくれ、この負の連鎖を絶ち切るために

『ちょっとまてよ

なんであんたは俺の事をそんなに知ってんだよ』

君の魂の中にねむっていた
だから知っているだけ

っというか此処はまずどこ?

『お、まえさぁ
バカってよく言われなかったか?

此処は記憶のなか
俺とお前の……
お前があっちで寝たから此処に繋がったんじゃね?

今、俺の体はお前の意識下にある
返してくれないか、俺の体


ラビの体温を、声を、触感を、魂を自分の記憶で感じたい

たとえ、同じ魂の持ち主でもこれだけは譲れない
返せ…俺の体』

君も大概あの子の事が好きだね
それにしても、意識の中か
じゃあ、君は俺の記憶を見たのかな?

『いや…見てない
つーか見れなかったって感じか…
まだ知るには早いって事だろ』

そうか…
どうしようか、俺は君にこの体を返したいのだけれど返し方が分からない

『大丈夫だ
体が目を覚ましそうになるとき此処に光が灯る
そこに俺が入っていけば戻るだろ』

そうか…
というか、早速灯ったな

いって感じてこい
お前の愛しい人の全てを

『当たり前だろ?じゃあ行ってくる』

あぁいってらっしゃい



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