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あの人は死んだはず
だって、あの人は…あの人は!


アクマに殺されて死んでしまった―――

俺の目の前で

血塗れになってしまっても俺のことを離さないで逃げ続けて
そのせいで…俺を置いていけば助かったのに最後に笑いながら死んでいったんだ

生きていたの?
それとも、アクマになってしまったの?
あぁでも、アレンが反応していないからアクマじゃないんだ

じゃあ、なんで生きているの?
あなたは俺の目の前でアクマに打たれて灰になって消えてしまった

『あなたはなんで生きているんですか

      '――――'さん』

あの人が目を見開く

『あの時、貴女は俺を庇ってアクマに打たれて灰になって消えてしまった
――なのに!なんで今ここにいるんですか…!
俺はずっとずっと貴女の事が頭から離れないで
もし、もしも会えたとしたら謝りたくて…』

涙が溢れてくる
あの人が死んで行く時とても笑顔で
それがとてつもなく苦しくて

「もしかして、貴方は母を知っているの?」
『母…?』

あの人はふっと柔らかく微笑んだ

「えぇ、母…
私、とても母に似ているんですって
だから私は―――ではなくてアニタ

でも、母が助けた貴方がこんなにも立派に成長しているなんて嬉しい限りだわ」
『……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
お母さんを殺してしまってごめんなさい
俺が居なければ、貴女はまだお母さんといれたかもしれない………』
「もう、いいのよ
でも貴方はとても苦しかったみたいね
今存分に泣きなさい
子供の時泣けなかった分まで」
『…………あ、ありがとうございます…ありがとう』

俺は回りにラビやリナリーが居るのにも関わらず号泣してしまった




翌日―――

リナリーが電話をかけるってんで着いていった

「…うん、船の準備が整い次第明朝には発つわ
たぶんここから先は通信が出来ないと思う
あそこは島国だし戻ってきたら連絡するね
アニタさんのお店に電話機があってよかった」

リナリーが電話をかけ終わるのを待ってるけど会話の内容が少し聞こえてくる
沢山死んだ
エクソシストも探索隊も沢山
全てがあいつ――千年伯爵のせいで

でも、俺はあいつのせいでは死ねないんだろう
この痣があるかぎりこの隊の誰よりも早く死ぬ
泣いているリナリーの頭をくしゃりと撫で受話器を受け取る

『あー、リーバー班長?』
〔なんだ?晃也か室長に用事か?〕
『最初はそのつもりだったけどリーバー班長でもいい
俺さ、クロス元帥が見つかる前に死ぬかもしれない
…身体がさ、ガダがきてる
だからもう言っとくわ』
〔晃也、それ以上言うな
言ったら怒るぞ
お前は生きて教団に帰ってきてただいまって言うんだ〕
『ふ、ふふっうん、そうだね
何か昨日泣いたから弱気になってたみたい』
〔喋り方、子供の時みたいになってるぞ〕
『いいじゃん、リーバー班長は俺の父親みたいな人だし
でも、ありがと元気でた
'行ってきます、お父さん'』
〔あぁ、いってらっしゃい晃也〕

がチャリと電話を切る
リナリーを見ると涙を流しながら俺を見ていた

「晃也、そんなに身体悪いの?」
『だいじょーぶだよ、そんなに直ぐには死にはしないから
でも、身体が悪いってことラビには言わないでくれるか?
負担になりたく無いから』
「なんでそこまで?」
『今までの俺の行動見て分かんない?

好きだからだよ、ラビが
この世界中の誰よりも』

リナリーを泣かせたからコムイに何か言われそうだなぁ
泣いているリナリーの頭をさっきよりもぐしゃぐしゃと強く撫で抱き締める

『俺は、身体が悪いからこの戦争が終るまで生きていないかもしれない
だからこそ、ラビの事が好きって事をラビに言わないで
ラビには気づかれてるかもしれないけど、俺が死んだあと'あぁ、あいつ死んだんだ'位の心の持ちようでいて欲しいから
お願い、リナリー』
「わ、かったわ言わない
でも、これだけは約束して!
自分の命が少ないからって自分を犠牲にしないって!」

俺はその願いに曖昧に笑って答えた
最後にリナリーをぎゅっと抱き締めて離れた

『行こうか、みんなが待ってる』



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