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「…お父さん、また仕事?」
ソリアの疑問に答えたのは継母だった。
「ええ、どうも経営の方がうまく行ってないみたい。他の商品とかは好調みたいなのだけれどね。今日もソリアちゃんと私、サリィの三人でご飯ね」
「ケイトさん。おはようございます」
「あら、私としたことが挨拶を忘れていたわ。…おはようソリアちゃん」
父の後妻、ケイトが茶目っ気溢れる笑顔で挨拶する。サリィもおはようございます奥様と頭を下げた。
ソリアはケイトが好きだった。知的でクール、それでいてどこか愛らしい彼女は母と言うより年の離れたら姉のような存在だ。ケイトも、正妻の子供のソリアを気に入ってくれているらしい、ちょくちょく仕事の合間を縫ってソリアの相手をしたり、本を手に入れては貸し与えたり、時には自ら厨房へ行きお菓子を作りソリアを喜ばせた。
まだ顔をあわせて数ヶ月だというのに、ソリアとケイトは本当の家族同然となっていた。
しかし、父親はまだ憎いままだ。
「別に3人でいいわ、女水入らずで」
「まあ、クラウスさんかわいそう」
そういいながらも二人はくすくすと笑い、サリィが朝食を並べる。
お嬢様扱いは苦手だけど、こういうささやかな楽しみが続くと思っていた。
そう思っていたその日に、ソリアの漸く出来上がった「日常」は無常にも破壊されることになる。
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