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「運がいい、ですって?」
慰めたつもりなのだろう、しかし男の言葉はソリアの感情に拍車をかけることしかしなかった。
悲しみより、怒りが沸き起こる。何に対して怒っているのかソリアにもわからなかった。
「運がいいわけないじゃない・・・ケイトさんもサリィもコーカスもみんな死んじゃったのよ!?わたし一人ぼっちじゃない!大体、あの連中はなんなのよ!?なんであんなにたしそうに人の命を奪えるの!?」
「・・・」
「なんでみんなが殺されなくちゃならないの!?なんでわたしなのよ!?ねぇ!」
沈黙を貫く男のぬ名倉をつかみあげ、ソリアは泣いた。町のみんなが殺されたのはこの男の所為ではない。これは完全なやつあたりだと頭のどこかで分かっていたのに感情が止まらない。
怒り、悲しみ、苦しさ、恐怖、そして喪失感。
全てがごちゃ混ぜになってソリアにもわけが分からなくなっていた。
男は八つ当たりを受ける義理もないのに、ソリアに付き合っていた。しかし、その手が慰めえるようにソリアの頭をなでることも、背中をさすることもなかった。
戸惑ったように上にあげて、下に落ちただけだ。
しばらくなきじゃくり、落ち着いてきたソリアを離すと男は落ちていた黒のコートをソリアにかぶせる。
「ふわぁ!?」
「着ておけ」
見るとkサリィが誂えてくれた服のワイシャツは無残に引き裂かれ、白い肌がむき出しになっていた。そのことに今更気づきソリアは顔を真っ赤にする。男がよこしたコートを上から纏うと男の吸っていた煙草の匂いがした。
「・・・煙草臭い」
「喧しい、貸してやってるんだから文句言うな」
「嘘、この匂い嫌いじゃない。ありがとう」
ようやくソリアが見せた笑顔に男はバツが悪そうにそっぽをむっくと頭をガシガシと掻いた。
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