Fight rhapsody | ナノ




1

目を覚ましたらあの恐ろしい出来事は全て夢で済むかもしれない。
なんだ、ただの夢じゃないかと笑えたかもしれない。そうして、その夢のことは忘れることができたはずなのだ。

第弐話 漆黒と白銀と

何処か親しみを覚える匂いを嗅いだ気がしてソリアは目を覚ました。

(ああ、お父さんの煙草の匂いだ)

まだどこかぼんやりとする頭でそう思い、思わず父を呼ぼうとして、やめた。
あの男は、呼ぶに足りない。ソリアの母親にした仕打ちを、ソリアは決してはすれはしないし許しはしない。
呼ぶのをやめたのはそれだけではない。自分のそばで煙草をふかしていたのは父親ではなかったのだ。
漆黒のシャツに同じ色の髪。目だけは暁闇を貫く朝焼けの黄金。
対照的な色が詰まった男だと、ソリアは思った。
と、男がソリアに気が付いたらしい、目だけをソリアに向け、無愛想な声を出した。

「目が覚めたのか」
「え、あ、うん・・・」
「そうか」

それだけを話して男は再び煙草を吹かす。
ソリアはぼんやりとしていた頭が少しずつ覚醒してきているのを確認する。そして、この男が目の前にいることの意味を唐突に理解して、泣きそうになった。

「夢じゃ・・・なかったの・・・?」

自分を助けたのは、この男だ。ということはつまりあの出来事は現実で、ケイトもサリィもコーカスも、自分とかかわった人たちはもういないのだ。
それをきいていたのだろう、男が言葉を放つ。

「あの街の人間、全員ぐちゃぐちゃの死体になっていた。お前は運がいい」


[ 9/22 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -