6
しかし、屋敷があった場所に、屋敷はなかった。
「なん、で・・・?」
崩れ去った屋敷の残骸を前に、ソリアは立ち尽くす。そこにも血が無数に付着していた。
「っ、誰か、サリィいないの?ケイトさん、どこ?」
きっと、二人とも無事で、自分を呼んでくれると思っていた。そう信じていたかったのに。
瓦礫から飛び出した左腕、近くに倒れていたサリィの体がそれを見事に裏切った。
左手の薬指にはルビーがはまった指輪が嵌っていた・・・ケイトが、今自分の腹に子度mおがいると教えてくれたとき見せてくれた結婚指輪だった。
サリィのかわいい顔は、右半分が抉り取られて脳がこぼれだしていた。
「あ・・・あぁ・・・」
ソリアの喉からはもう意味を持たない音が引きつったようにこぼれ出るだけだ。それと同じように目からは大粒の涙が零れ落ちる。ひざをつくその直前、腕をつかまれて無理やり立たされた。
「!?」
誰か生きて、自分を助けに来てくれたのか。そう思えたのもつかの間。
「・・・!!」
先ほどの、コーカスを瞬殺した者がソリアをつかんでいた。
「いやっ、放して!!」
ソリアはもがくが、びくりともせず、更に十字架に貼り付けにでもされるような形でもう片方の腕もつかまれる。背後にその者の息遣いを感じながら前方を見てしまったソリアは悲鳴さえ出なかった。
背後に立っている者が眼前に何人も、自分を取り囲んでいたのだ。
そして、あの歌がソリアの耳についた。
[ 6/22 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]