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古びた古本屋で、黒い表紙の本を見つけた。錠が付いていて立ち読みが出来なくて、でもどうしても中身が気になるから久しぶりにお金を使って買った。そして気が付いた。
(この本の鍵、無いじゃない)
しまった。これじゃ開けない。どうして古本屋にいた時点で気が付かなかったんだろう。
古本屋に居たときならお店の人に聞いて錠を壊してもらうことも出来たのに。
「どうしよう・・・」
お父さんとお母さんが帰ってきてしまう。そうしたらこの本は捨てられてしまうだろう。
折角買って、まだ読んでないのに。 それはいやだ。
どうしようと逡巡していたときだった。
「あれ・・・?」
自分の足元に光るものを見つけて、拾い上げる。複雑な模様の掘り込まれたハートのレリーフが付いている。鍵だった。
「こんなかわいい鍵、持ってたっけ?」
ぐるりと自分の部屋を見回す。自分の部屋なのに自分のものと言えば学校の教本と、今日買ってきたこの黒い本だけ。
あとは制服、ベット、机と椅子。それ以外は売られた。
そんな思考を追いやって試しに鍵穴にその鍵を入れてまわしてみる。
かちゃと軽快な音がして錠が外れた。
「あ、開いた」
なんで開いたのかは分からない。でもこれで本が読める−−−−−−−
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