暗闇アリス | ナノ




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「!?」
「オハよウありス」

ばっと振り返った亜理沙にのんびりとそう告げたのは全身を非常に黒に近い濃い
灰色の長いローブに纏った人物だ。フードを目深く被り、奇妙な面で顔を隠して
いる。
声からして、男性だろうかと亜理沙が考えた時だった。

「サぁアりす、物語ヲ完成さセヨう」

先程とは打って変わって甲高い女の子の様な声が不明瞭な発音で言葉を綴る。亜
理沙は思わず警戒する事を忘れて口を開いた。

「…あなたって、男の人?」
「あリスノ好きナ様二感ジるとイいヨ。僕ハどちラでモいイカら」

亜理沙の失礼な疑問に対して謎の人物は不明瞭な発音よりも不明瞭な答えを返し
た。

「どういう事?それより本の中って?ここは日本じゃないの?」
「二ホン?ソんな所ガあるノカい?」

今度は嗄れた老人特有の声がアリスの鼓膜を震わせる。

「…ねぇ」
「なンダだイアりす?」

不思議そうに屈みこんだ長身の仮面を下から覗き込み、亜理沙は本日最大の疑問
をぶつけた。

「あなたって誰なの?」
「あア」

爪の長い手をポンと叩き、その手で亜理沙の頭を撫でた。

「っ!?」
「ゴメんよありス。僕トシた事ガ自分の名前ヲ言い忘レルなンて」

身構えた亜理沙に名残惜しげに手を放したその人物(?)はゆっくりと自分の名を
告げる。



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