1
アリス、アリス。さぁ目をお開け。
暗い夢で目をお覚ましなさい。
何処かで歌が聞こえて消えた。亜理沙が意識を取り戻したのはそれから暫くして
からのことだった。
「ん…」
うっすら開いた瞳はしぱしぱと瞬きする。しかしどうしてか、目を開けたのにも
関わらず真っ暗だった。
「あ…あれ?」
自分は今、目を開けた筈だ。なのに、何故暗い?
亜理沙は電気を付けようと手を伸す。が、その手が電気のスイッチに触れること
は無かった。その変わりにざらりとした感触が亜理沙の手に伝わった。
「っ!?」
びくりと手を引っ込める。
それを見計らった様に風が吹いた。
「え…?」
亜理沙は目を疑った。暗いと思っていた部屋がいきなり明るくなった。いや、亜
理沙がいたのは自室ではない。一瞬明かり差し込んだそこは、森だった。
真っ暗だったのはそこに生える草木全てが漆を塗った様に黒かったためだ。
「何…ここ…?」
「ここハ本の中ダよアリす」
呆然と呟いた亜理沙の背後から、低めの声が妙な発音で響いた。
[ 4/6 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]