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固っ苦しい話して悪かった、とエルベが言うと同時に外から大きな音が響き、俄かに騒がしくなる。
外を覗けば二つの人外の巨躯をギルドナイト達が囲っていた。
しかし、均衡こそすれ衝突しない両者を見たエルベは、二人に笑いかけた。
「レン、ファイ。あんた達にお客さんよ」
疑問符を飛ばす二人に早くでてやりなと言われ竜車から放り出される。
二つの陰の正体がわかった途端、レンは大声を張り上げた。
「げっくん!!とフルフル!!」
まるでリオレウス顔負けの声はファイとギルドナイト達の鼓膜を容赦なくついたのだがレンはまるでお構い無しで、よたよたと駆け寄る。フルフルはその場から動かずじっとしていたが、ゲリョスはレンを見つけるなりどすどすと突進していく。
ギルドナイト達が身構えたが一人と一頭はやはりお構い無しだ。
「フルフルもう大丈夫だろ?」
「ぎゅっ!」
「助けるって約束したもんな!」
「ぎぎょっ!!」
どむっとゲリョスに抱き着くレンを見ていたファイは、何を思ったのかとてとてと一人と一頭に近寄る。そして無言で抱き着いた。
どうやら、自分もやりたくなったらしい。
そんな二人と一頭を見ていたエルベに、部下の一人が声をかけた。
「指揮官、あの二頭はどうしたら…」
「あんた、あれを見て何とも思わないの?あのゲリョスとフルフル亜種は狩猟対象じゃない、寧ろ密猟の被害者でブローカー検挙協力者よ。そっとしておきなさい」
「了解致しました…しかし、不思議な光景です。屠り合う両者があの様にじゃれあうなんて」
「ええ、だから…」
「はい?」
エルベの最後の一言を聞き逃した部下が振り返るもエルベは既に竜車に乗り込んでいた。
「…だから、絶対あの子達は苦しむわ」
悲しげな声が、エルベ以外無人の竜車に響いた。
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