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数十分後、ギルドナイトがようやく到着し事の収拾を始める。
その間レンとファイは事情を聞きたいということからギルドナイトが乗ってきた大型の竜車に乗せられた二人の目の前に見知った人物が上機嫌に笑いながら座っていた。
「はぁーいお二人さん。今回は大変だったわねー」
「あ」
「エルベ!?」
皆のギルドマスター補佐兼受付嬢、エルベ・シャプリエその人だ。
呆然とするレンにファイがたどたどしく説明する。
「エルベ…ギルドナイトの偉い人だから」
「ギルドナイト総統括指揮官、一応あたしのもう一つの肩書よ」
ま、いつもは暇なんだけどねーと笑うエルベにレンはんなあほなと顔に出す。ファイは慣れているらしくその辺りはスルーしていたが。
一通りの事情を聞いたエルベはふむふむと頷き、二人に顔を近づけ、今からの話は内緒にしておきなさいよと釘を打つ。
「…この所、裏市場で『カルマ』の値が跳ね上がり数も増えてきてる」
「『カルマ』が…!?」
『カルマ』…チエリーが成体へ成長できなくなった原因の薬。出所、原料、製作者が一切不明の魔の薬。
「それと同時に、密猟者間で飛竜種用の兵器…滅竜兵器が出回るようになってきたの」
「…もしかして」
ファイの確信と重なるようにレンが村を見る。しかしエルベは首を横に振った。
「いや…この村は末端でしかなかった。出てきた兵器と『カルマ』の量は今まで検挙してきた組織の中でも少ないくらい」
「つーことは何だ?まだこんな物騒なもん作ったり流したりしてる連中がいるってことか?」
「ええ」
「…まだ、中枢には手も届いてないってこと?」
「…そういう事になる。情けない話なのだけれど」
僅かに顔をしかめるファイの横でレンは今の話をカインに聞かれなくてよかったと胸を撫で下ろした。
何故かそう思ったのだ。
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