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破壊的な白銀は暴走をやめることはない。カインは自分が何をしているか理解出来ていなかった。
ファイは目も逸らせず、カインの残虐さを直視していた。まだ誰も死んでいない、それだけ聞けばまだましなようにも聞こえるだろう。しかし、実際誰かが死んでいた方のが良かったのかもしれない。
腕や足をもがれ、肉塊(したい)に成り切れない男達が断末魔の叫びをあげ、呻く。
今までファイが見たこともない位悲惨な状況だった。
うっかり見てしまったちぎれた腕の断面図に吐き気が止まらず、ファイは口を抑える。
しかし、そのお陰か座り込んでいたファイの足に少しだけ力が戻った。
「か、いん」
小さな、掻き消えてしまいかねない小さな声がファイの口から零れる。
「かいん、カイン」
口にするたびに溢れるのは思い。
もう止めて、貴方がそんなことしなくていいんだよ。だからこれ以上、
「カイン止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
優しい貴方が傷付くようなことをしなくていいんだよ。
ファイはカイン目掛けて走り出した。
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