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「つまり、ハンター殿はあのゲリョスが我々の村を襲ったのではないとお考えか?」
「はい。もしかしたらたまたま飛来した他の飛竜に襲われたのかもしれないんです」
カインとファイは依頼者の住むドドの村に到着し、村長と話をしていた。カインはファイと別行動している。ファイには密猟の事実を探して貰い、自分は村長に話を…と考えたのだ。
もし密猟が事実なら間違いなくカイン達は危険に晒される。ならば証拠を掴んで一人を逃がした方が確実にギルドに報告ができる。
リスクは、少ない方がいい。
「しかしなぁ…毒怪鳥があの沼におってはわし等も恐ろしゅうて満足に生活ができんのじゃ」
「しかし僕達が見た限りあのゲリョスは危険な個体には含まれないんです。それに沼地の生体系を崩してしまいかねない」
「だが…」
ゲリョス討伐撤回をぐずる村長に、カインは確信した。
(…黒だな)
しかし腑に落ちない。ゲリョスの素材は割とありふれており売り上げたとしても対した金額にはならない筈だ。
それでも言葉を募ろうとしたカインの声を遮るようにファイが飛び込んできて、冴え冴えと言い捨てた。
「カイン、もう何も話し合うことはない!」
「ファイさん!?」
「こいつ等の目的はゲリョスじゃない、フルフル亜種の方だ!」
ファイがぎろりと村長を睨み付ける。
二人を見る村長の目が欲に濁った。
剥ぎ取り用ナイフの先端を滑らせる様にフルフルの皮膚を切る。
簡単そうにして見せるレンだが、血管を切らずに肉だけを切り開くのはかなりの集中力を要する作業だ。事実、レンの額には夥しい汗が伝う。
「くっそ…変なもん突っ込みやがって…!」
試しに異物を引っ張って見たがびくともせず、もう少し切り開く。
ぶちっと嫌な音がした。
「しまっ…!!」
溢れる鮮血がレンの顔を赤く染めた。
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