18
「あぁぁぁぁぁぁあ!もぉぉぉぉ!!」
ぶちぶちとネムリ草を引きちぎりながらカインは奇声を上げた。手の中のネムリ草が小さくなっているが本人は気が付いていない。
他にも薬草や石ころも通常より小さくなってしまっている。もちろんカインが乱暴に扱ったためだ。
それでも自分の中からもやが消えず、カインは殴り付ける様に蜂の巣を粉砕する。
(何なんだ何なんだ何なんだ!?)
ファイに対して八つ当たりしてしまうわレンを邪険に感じるわでカインのストレスは臨界点に到達してしまっていた。
自分の感情がここまで一人歩きしてしまったのはカインにとって始めての事だった。
「何なんだよ…ほんと…」
握り閉めた手の平を、防具越しに爪が食い込んだ。
その頃ファイもイライラしながらネンチャク草を引っこ抜いていた。こちらはカインとは違い終始無言なのだが雰囲気が黒々しており、ブルファンゴも近寄れない状態だった。
「………………………」
近寄るのも恐ろしい空気を発しながら、必要以上のネンチャク草を採取しながら、ファイは手を止めた。
(…何か、悪いこと、したかな)
確かに殴りはしたが、その直後は何時ものカインだった。カインが怒ったのはゲリョスとフルフル亜種の様子を見た後位だ。
「…?」
ファイは自分の行動に首をかしげた。カインとはケビンを通じて知り合っただけの関係だ。
よくよく考えて見ると今回だけじゃない、朝食をみんなで食べ、カインがリオレイアにチエリーと名付けてくれた時、自分は何を見ていた?
「………−−−っ!!」
ファイは顔に熱が集まるのを感じた。
なんだ、自分は今まで
(…カインを…見てた…?)
自分の気持ちにも気付かなかったなんて!
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