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カインが戻ってきたのを見たゲリョスは、その背にレンと隣にファイがいるのを見るや否や再び威嚇する。特に自分に攻撃を浴びせたファイには容赦なく唸り声を上げる。カインは大丈夫とゲリョスの腹を軽く二回叩くとレンをフルフルの前に下ろした。
「こりゃひでぇな…」
痛々しい光景にレンが顔を顰る。顰ながらもフルフルの胴体をぺちぺちと触り他の部分にも傷がないか調べる。
手慣れた様子でフルフルを触診するレンを見てファイは首をこてんと傾け、カインに話し掛ける。
「カイン、レン…医者みたい」
「うん、レンはお医者さんだよ」
「…?」
「レンのご両親はね、ハンター稼業と兼業でお医者さんしてたんだ。レンもよく手伝ってたよ」
村を出る前はちょっとした手術や出産も手伝ってたしとカインが言うと、ファイは凄いと呟いきレンの行動を見ていた。
カインはむっ、とまた不愉快になる。話を振るだけ降って沈黙したファイにではない、今懸命にフルフルを診ているレンに、だ。
(ああもう…ほんとに何なんだ)
もやもやしながらカインはぼすんとゲリョスにもたれる。もたれられたゲリョスは小さく悲鳴を上げたが、カインがもたれただけだと分かると再びフルフルを見守りだした。
なんだか取り残された気がして、カインはふて腐れゲリョスの皮をつまんだ。
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