D×D Bypar | ナノ




13

一人で行くなと止めたレンを言い伏せ、カインは単身ゲリョスが身を隠しているだろう洞窟へ向かっていた。レンを置いてきたのはもちろん足の負傷もあるが、意識のないファイを一人にするわけにもいかないからだ。
だからと言って二人の回復を待っていては時間切れとなり、いつかあのゲリョスが討伐されてしまうかもしれない。


カインはどさくさでついたペイントボールの臭いを探り足音を立てないように洞窟へ侵入した。ホットドリンクの効果はまだあるらしく、寒さは感じない。

念のため、いつでも抜刀出来るように大剣の柄に手をかける。

(…ん?)

そこでカインは生き物の息遣いが二つ聞こえるのに気が付いた。一つはゲリョスで間違いない。ペイントボールの臭いが濃いからだ。ならばもう一つは、なんだ。
カインは恐る恐る岩影から覗き込んだ。
そこには必死に回復薬を開け中身を出そうとしているゲリョスと、息も絶え絶えの飛竜がいた。

「フルフルの、亜種…!?」

目が無く裂けた口を持つ不気味な風貌。柔らかいと言うよりはぶにぶにしていそうな皮膚、楕円に近いフォルム。形状は立派なフルフルだった。しかし、通常ならば白い体を持つフルフルだが、カインの目の前にいるフルフルは血の様に赤い。
それ以上にカインは、フルフルの横腹とおぼしき所の傷に衝撃を受けた。
皮を裂き、肉を刔り取った上で熱した鉄棒で傷を引っ掻き回したような傷は、見るに堪えなかった。皮膚と同色の体液が冷えた地面に垂れている。

(そうか…ゲリョスはこの為に回復薬を盗んでいたんだ)

ただ薬草を使うより、アオキノコで効果を上げた回復薬のが効く。どうやって知ったのかは解らないが、ゲリョスはやみくもに回復薬を盗んでいた訳では無かったのだ。


ばしゃばしゃと回復薬をフルフルにぶちまけるゲリョスは必死そのものだったのだが、なんだかその様子がコミカルで、カインはつい吹き出してしまった。
ちなみにここは洞窟内部。そうするとカインの笑い声は響き渡る訳だ。
もちろん同じ場所にいるのだからゲリョスとフルフル亜種にも丸聞こえ。
ゲリョスがフルフルの前に立ち、トサカをかちかちと発光させながら威嚇の声を上げる。

もう隠れる意味もないなとカインはゲリョスの前に踊り出る。しかし、その手はもう大剣の柄を掴んではいなかった。



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