D×D Bypar | ナノ




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「レン!ファイさん!」

カインは血相を変えて二人に駆け寄る。幸いレンの方は毒沼に突っ込んだのが片足だけだったため苦しみながらも意識があった。
しかし同じく突き飛ばされただろうファイは全身が浸かってしまい、毒の侵食が早い。橙色の瞳は焦点が合っていなかった。

「わり…ファイ…俺を庇って…」
「っ…レン、動かないで」

応急処置をしようとカインは自分のポーチをまさぐる。しかし、あるはずの回復薬と解毒薬がなかったのだ。
カインは慌ててレン、ファイのポーチを探るが二人の持ち物の中にも見当たらなかった。

「やられた…!」

カインは出発前にエルベの台詞を思い出した。
ゲリョスに回復薬と、よりによって解毒薬を盗まれてしまったのだ。

「まじ…かよ…くっ!」
「喋るな!一回ベースキャンプまで戻って…?」

カインがファイを抱き上げようとしたと同時にずん、と足音が重く響く。音はどんどんカイン達に近付く。カインはそっと大剣を構えたが、背中を流れる嫌な汗は止まらない。

そして、瘴気の中から先程の−片翼にナイフの刺さった−ゲリョスがゆっくりと近づいて来たのだ。

(まずい…僕一人じゃ二人を庇って戦えない…!)

じりじりと距離を詰めるゲリョスにカインはファイとレンを抱えて後退る。最悪自分が二人の盾になる覚悟で大剣で牽制する。
しかし、カインの覚悟は杞憂に終わった。

よく見えなかったが、ゲリョスは嘴に何かをくわえていた。その何かをそっと地面に置くと一目散に逃げたのだ。恐らく盗んだ拍子についたのだろう、ペイントボールの独特の臭いがカインの鼻をつく。

地面に置かれた物を見たカインは勢いよくそれを手に取った。

解毒薬と、少量の薬草とにが虫が遠慮がちに置かれていた。

「…どうして」

確かに事前にエルベから情報は貰っていた。しかし、取られていない物、しかも今必要としている物までついて来るとは思っていなかった。

(とにかく、今は二人の治療を優先しないと)

カインはそれを二人の元へ持って行き、手当てを始めた。



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